音楽

ブルックリンのインディ・フォーク4人組、BIG THIEFが名門4ADに移籍。バンドの内なる宇宙に迫る新作『U.F.O.F.』をリリース

Bigthief

 
 
飛躍のタイミングに相応しい充実の3rdアルバム『U.F.O.F.』が完成した。
 
紅一点シンガー、エイドリアン・レンカー(Vo, Gt)を擁するブルックリンのインディ・フォーク・バンド、ビッグ・シーフはネブラスカ州オマハのブティック・レーベル、〈Saddle Creek〉からリリースした2枚のアルバムが歓迎され、日本でも熱心なファンがいるほどインディ・シーンでは、すでに知られた存在だったが、今回の名門〈4AD〉移籍をきっかけにディアハンター、ザ・レモン・ツイッグスという時代の寵児と謳われたレーベルメイトたちと並び称されるという意味で、さらに大きなバンドになっていきそうだ。
 
2018年5月にリリースしたセルフ・タイトルのソロ・アルバムが話題になったバンドのギタリスト、バック・ミーク(Gt)がその後、ジェフ・トゥイーディーのツアーのオープニング・アクトに抜擢されたことも追い風になった。しかし、だからと言って、決してセルアウトしたわけではない。むしろ、『U.F.O.F.』はそれとは正反対のベクトルを持った、ビッグ・シーフの内なる宇宙に迫る作品になっている。
 
ミークのみならず、バンドのメイン・ソングライターであるレンカーも2018年10月、『abysskiss』というソロ・アルバムをリリースしている。いかにバンド内の創作意欲が高まっていたかが窺える。すでにツアー中から新曲を披露していたバンドは、三たびチームを組んだプロデューサー、アンドリュー・サルロとともにシアトル近郊の農場にあるベアー・クリーク・スタジオでライヴ・レコーディングを敢行。生々しいサウンドを最大限に生かしながら、アンビエンスを意識した音響効果も加え、『abysskiss』収録の「From」「Terminal Paradise」のバンド・ヴァージョンも含む全12曲が完成させられた。
 
 
 
 
音数は前2作以上に削ぎ落とされ、緊張感漂う演奏の中でビッグ・シーフの核になっているトラディショナルなフォークの影響が剥き出しになっているが、フィードバック、ひずみ、リヴァーブを巧みに使ったミークのギター・プレイや前述した音響効果が音の揺らめきとともに1曲1曲をユニークなものにしている。
 
弾き語りの「Orange」からグランジィな「Jenni」まで、曲調は思いの外、幅広い。中にはマックス・オレアルチック(Ba)のグルーヴィーなベースが光るビッグ・シーフ流ソウル・ナンバー「Century」、オレアルチックとジェームズ・クリヴチェニア(Dr)が鳴らす跳ねるリズムが心地いい変形ブギの「Strange」、という新機軸も。
 
“未知の存在と友達になる”というテーマの下、さまざまな女性が登場する物語を、曲ごとに表情を変えながら歌うレンカーのヒプノティックなヴォーカルもまた聴きどころだ。
 
感情を抑え、囁きかけるように歌う「Century」、悲痛なトーンを滲ませる「Terminal Paradise」、そして、情感豊かにアルバムを締めくくる「Magic Dealer」。振り幅の広い感情の揺れを、ダイナミックに表現するレンカーの歌の魅力を際立たせることに男性3人は集中しているようだ。そこに、よりタイトになったメンバー4人の関係性を聴き取ることもできる。
 
ブルックリンでシンガー・ソングライターとして活動を始めたレンカーがミークに出会い、2015年にビッグ・シーフを結成してから4年。バンドは今、最良の状態にあるようだ。初めてメンバーが姿を現したアルバムのアートワークからも今のバンドの自信がしっかりと感じられる。
 
『U.F.O.F.』は5月3日、リリースされる。
 
 
Ufofjkt
U.F.O.F.(4AD / BEAT)
 
 
 
 
 
 

|

TWAINことMAT DAVIDSONのコネクションと足跡を辿る

Mm39scvxqzuusfd1547454375_154745443
 
 
リリースは2017年10月だから、ミュージック・マガジン1月号で参加させてもらった「音楽評論家/ライター、ミュージシャンが選ぶ2018年のベスト・アルバム10枚」には入れられなかったが、実は2018年、繰り返し一番聴いたのは、マット・デヴィッドソン(Mt Davidson, Mat Davidson)によるソロ・プロジェクト、トウェインの『Rare Feeling』だった。
 
 
Rarefeeling Rare Feeling (Keeled Scales)
 
 
3月にSXSWでトウェインのライヴを見たとき、黄昏たバラードを、美しい歌声で歌いながら、高ぶる感情を抑えきれずに体を揺らして、熱情を迸らせるパフォーマンスに胸を鷲づかみにされ、ライヴが終わると、早速、物販デスクに並んでいた『Rare Feeling』を購入した。そして、家に帰ってからライヴで演奏していた曲の数々を、改めて聴きなおしてみたところ、インディー・フォークとオールドスクール・ソウルのクロスオーヴァーと謳われるサウンドのユニークなサウンドもさることながら、何よりも聴く者を陶酔の境地に誘うロマンとパッションに満ちたマットの美しい歌声にすっかり心を奪われてしまった。
 
 
 
 
 
 
トウェインの存在は、筆者の大好きなニューオーリンズのバンド、デズロンズが16年にリリースしたシングル「Tres Grand Serpent」のカップリング・ナンバー「What Are They Doing In Heaven Today?」にトウェイン名義で客演していたから、辛うじて名前だけは知っていた。しかし、正直、それほど興味があったわけではない。だから、ライヴを見たのは、本当にたまたまだった。そういうライヴがその年のSXSWでベスト・ライヴと言えるほど印象に残っているんだからおもしろい。
 
 
 
 
 
 
SXSWが開催されているテキサスの州都、オースティンのダウンタウンの南端にある湖畔の野外ステージでロッキー・エリクソンのライヴを見たあと、活動を再開したオースティンのベテラン・バンド、ナイフ・イン・ザ・ウォーターを、ランバーツというバーベキュー・レストランで見るため、10分ほど歩き、倉庫街がおしゃれな街に生まれ変わった西2番街に移動。最初の予定では、ナイフ・イン・ザ・ウォーターを見たら、SXSWの会場になっているヴェニューがいくつも軒を連ねている6番街でクリス・ステイミー、あるいは日本のDYGLを見るつもりだったが、身動きできないほど混雑している6番街に行く気にはなれず、この日は最後までランバーツで過ごすことに決めた。バカ騒ぎをする酔っ払いもいない、こぢんまりとした仲間内のパーティーといったのんびりとした雰囲気が、とても心地よかったのだ。
 
その夜、ランバーツではオースティンのブティック・レーベル、キールド・スケールズ(Keeled Scales)のショウケースが開催されていた。出演は前述したナイフ・イン・ザ・ウォーターの他、キールド・スケールズの看板バンドになりつつあるサン・ジューンやソロ・アルバムをリリースしたところ、ジェフ・トゥイーディーのツアー・サポートに抜擢されたビッグ・シーフのギタリスト、バック・ミークら、計6組。そのトリを務めたのがトウェインだった。
 
『Rare Feeling』のリリースと18年3月のSXSW出演をきっかけに期待のインディー・アクトとして、にわかに注目され始めたトウェインだが、『Rare Feeling』以前に、すでに5枚のアルバムと2枚のEPをトウェイン名義で自主リリースしている。『Madeline』と題した1stアルバムのリリースが05年というから、そこから数えても13、4年のキャリアがあることになる。
 
トウェインことマット・デヴィッドソンはヴァージニア州ロアノークで生まれた。その後、10歳の時にカリフォルニアに移り住み、04年にサンフランシスコの北に位置するマリン・カウンティーにある私立高校を卒業。そこでクラスメートだったのが、デズロンズサム・ドアーズトウェインという名義は、歴史の授業中、サムが思いついたものだという。「だから、トウェインが何を意味するのか俺にはわからないんだ」と言いながら、マットはいつしかトウェインの名の下、音楽を作り始めた。
 
その一方で、高校卒業後、マットはボストンのバークリー音楽大学でマンドリンを専攻。在学中はギタリストのジョーダン・ハイドとホット・ジャズのデュオを組んで、クラブで演奏していたという。因みにジョーダンは現在、サム・ドアーズも一時期、メンバーだったハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフのギタリストとして活躍している。
 
その後、バークリーを卒業したのか、中退したのかわからないが、ボストンで知り合ったオルタナ・フォーク・バンド、アニー(・リンチ)&ザ・ビーキーパーズにマルチ・プレヤーとして加わったマットは、バンドとともにニューヨークに移住。マンドリンはもちろん、フィドル、バンジョー、ピアノなど、さまざまな楽器が演奏できるうえに歌も歌えるマットは、ミュージシャン仲間からずいぶん重宝されたのだろう。09年頃からはブルックリンのニュー(・ブルー)グラス・バンド、スピリット・ファミリー・リユニオン、ロード・アイランド州プロヴィデンスのインディー・フォーク・バンド、ロウ・アンセムに参加。シーンに足跡を残してきた。中でもロウ・アンセムが11年にリリースした壮大(と言うか、雄大)なコンセプト・アルバム『Smart Flesh』を作るうえで、マットが果たした役割はかなり大きかったんじゃないか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo
2010年のSXSWで見たロウ・アンセム。手前がマット。
 
 
 
しかし、スピリット・ファミリー・リユニオンロウ・アンセムに参加しながらマットは自身の音楽を作ることをやめてしまわったわけではなかった。同じ頃、マットトウェイン名義の活動にも精力的に取り組んでいたことは、『Sleeping Tree』(07年)、『Almanack』(08年)、『Love is All Around』(10年)、『Life Labors In The Choir』(14年)と精力的にアルバムをリリースしていることが物語っている。
 
その後、ロウ・アンセムスピリット・ファミリー・リユニオンを離れ、自身の活動に専念し始めてからも、マットはマルチ・プレイヤーとして、前述したデズロンズのシングルの他、ブルックリンで親交を深めたに違いないビッグ・シーフコニー・コンヴァースのトリビュート・アルバム『Vanity of Vanities: A Tribute To Connie Converse』(17年)に提供した「There Is A Vine」にジェフ・トゥイーディーとともに客演したり、フィラデルフィアのシンガー・ソングライター、ラングホーン・スリムの『Lost At last Vol.1』(17年)、そしてバック・ミークのソロ・アルバム『Buck Meek』(18年)のレコーディングに参加したりしている。
 
 
 
 
 
 
 
 
マルチ・プレーヤーとしてのマットの才能は、これからも多くのミュージシャンから頼りにされることだろう。マットのサポート活動を追うという楽しみが一つ増えた。
 
トウェインとしては、昨年のSXSW出演後には、18年のミュージック・シーンの顔のひとり、コートニー・マリー・アンドリュースのヨーロッパ・ツアーでサポート・アクトを務めるほか、彼女のステージで演奏もしている。その経験はトウェインにとってアドバンテージになったはず。
 
 
Courtenyandtwain
コートニーとマット(手前)。
 
 
1月25日にはキールド・スケールズから『Rare Feeling』と同セッションからの4曲に16年11月にデジタル・オンリーでリリースした『Alternator E.​.P』の5曲他を加えた『2 E.P.s』を、アナログ盤およびカセットテープでリリースする。すでにマットは新たな作品のレコーディングに取り組んでいるようだが、『Rare Felling』リリース後、ぐぐぐっと注目度が高まってきたタイミングを逃すわけにはいかないということなんだろう。19年は、さらなる活躍に期待したい。
 
そんなトウェインジェフ・トゥイーディーのツアー・サポートに抜擢されたバック・ミークに加え、デビュー・アルバム『Years』が昨年、多くのメディアから歓迎されたサン・ジューンと所属アーティストが相次いで注目されたことで、キールド・スケールズも設立から6年目にして、転機を迎えそうな予感。トウェインともども注目してみたい。新たな出会いに期待している。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

|

JOE ELYとJOE STRUMMER。2人のJOEの友情に思いを馳せる

Joeandjoe

 
 
ジョー・イーリーの『The Lubbock Tapes: Full Circle』とジョー・ストラマーの『Joe Strummer 001』。
 
今年リリースされた2つのアンソロジーを聴きながら、2人のジョーの友情に思いを馳せている。
 
 
Lubbock001
 
 
『The Lubbock Tapes: Full Circle』は最近になってたまたま見つかった74年と78年のデモ音源をまとめたものだ。全15曲中13曲がその後、再レコーディングされ、日の目を見ているが、フラットランダーズ時代の「You’ve Never Seen Me Cry」の再演ヴァージョン「Windmills and Watertanks」、「Joe’s Cryin’ Schottiche」という今回、初出となる貴重な2曲も収録されている。
 
78年のレコーディング・セッションは、79年発表の3rdアルバム『Down On The Drag』 のプリプロだったが、当時のジョー・イーリー・バンドのダイナミックな演奏を表現しきれていない『Down On The Drag』の平板なリミックスにジョーはずっと「曲はいいのに!」と不満を感じていた。そんなとき、バンドのペダル・スティール奏者、ロイド・メインズの家の納屋から、長年、行方がわからなかったテープが見つかった。改めて、78年のデモを聴いたジョーは、「これを聴いてもらうべきだ!」と思ったという。
 
確かに。便宜上、ジョー・イーリーとソロ名義になっているものの、固定メンバーで活動していた70年代後半~80年代前半のジョー・イーリー・バンドにとって、ジェシー・テイラー(ギター)、ロイド・メインズ(スティール・ギター)、そしてポンティ・ボーン(アンコーディオン)が重ためのリズムの上でソロを応酬しあうエネルギッシュなインプロは、タフなジョーのヴォーカル、そしてカントリー、ブルース、テックス・メックスをごた混ぜにしたユニークなロックンロール・サウンドと並ぶ大きな魅力だった。アコーディオン奏者を含む編成は、きっとジョー・ストラマーを魅了したに違いない。
 
 
Joeelyband2
 
70年代後半のジョー・イーリー・バンド
 
 
一方、ワンオーワナーズからメスカレロスまで、ジョー・ストラマーのクラッシュ以外のキャリアを、客演音源やサントラ提供曲も含め、まとめた2枚組が『Joe Strummer 001』。クラッシュを聴いているだけでは捉えきれない幅広いバックグラウンドを、ストラマーが持っていたことを知るにはとても便利だ。きっと『002』『003』も作られるに違いない。[CD TWO]には未発表曲や未作品化音源が全12曲、収録されている。こちらも貴重だ。
 
イーリーとストラマー。
 
2人のジョーが出会ったのは、78年3月。ジョー・イーリー・バンドがライヴでロンドンを訪れた時だった。アメリカよりもイギリスで受けが良かった1stアルバム『Joe Ely』(77年)の曲をラジオで聴き、イーリーのファンになったストラマーら、クラッシュのメンバーたちが“アメリカからやってきたパブ・ロック・バンド”を歓迎しようと楽屋を訪れたのだった。西部劇やマーティ・ロビンズの曲の中で描かれているテキサスに憧れを抱いていたクラッシュのメンバーたちは、ホンモノのテキサンに会えるとわくわくしていたようだ。
 
一方、当時のイギリスのパンク/ニュー・ウェーヴ・シーンのことなど、何も知らなかったイーリーたちは最初、クラッシュのことを、バンドマンだとは思えず、自分たちの楽器を盗みにきたチンピラだと思ったそうだ。しかし、話しているうちにバディ・ホリー、エディ・コクラン、エヴァリー・ブラザーズ、スペインの詩人、ロルカが好きという共通点を見出したジョーとジョーは意気投合。ライヴが終わると、クラッシュとジョー・イーリー・バンドのメンバーたちはロンドンの街に繰り出して、朝まで飲み明かした。そして、ロンドン滞在中、親交を深めた2人のジョーは、いつかステージを共にしようと誓い合った。
 
その約束は早速、翌79年、実現する。ついに北米大陸に上陸したクラッシュは、パールハーバー・ツアーのサポート・アクトにジョー・イーリー・バンドを起用。モンタレー・ポップ・フェスティバル、テキサスの諸都市、ロサンゼルスで同じステージに立っている。
 
 
Elyandclash
 
 
 
 
 
『London Calling』のブックレットに写真が使われているテキサス州オースティン公演は、「ジョー・イーリー・バンドがガソリンを撒き、クラッシュが火をつけた!」と評されるほど盛り上がったそうだ。
 
そして、翌80年2月。ジョー・イーリー・バンドは再び渡英。クラッシュのロンドン・コーリング・ツアーに参加した。その際、ジョー・イーリー・バンドはライヴ・レコーディングを行っている。当時のエネルギッシュなバンドの姿を見事に捉えたその音源は早速、『Live Shots』(80年)というタイトルでリリースされ、現在ではイーリーの代表作の1枚に数えられている。
 
「クラッシュと演奏することは、確実に俺のバンドを一段階、上に蹴り上げた。俺たちに火をつけたんだ」とイーリーは当時を振り返っている。彼が81年にリリースした4thアルバム『Musta Notta Gotta Lotta』がファンク・ナンバーにもアプローチしながら、ネオ・ロカビリーにも共鳴するロックンロール色濃い作風になったのは、『Down On The Drag』からの自然な流れと考えることもできるが、『Musta Notta Gotta Lotta』にパンクにも通じる勢いが充満しているのは、クラッシュと活動する中で、イーリーが言うようにやはり火をつけられたことも大きいんじゃないか。
 
 
 
その後も2人のジョーの公私にわたる親交は続き、イーリーは81年にクラッシュがニューヨークのボンズ・インターナショナル・カジノで3週間にわたって、計17公演を行ったライヴや84年のコロラド州デンヴァーにある野外劇場、レッド・ロックスでもクラッシュとともにステージに立っている。また、81年にはストラマーに請われ、「Should I Stay or Should I Go」のレコーディングで、スペイン語のコーラスを加えている。
 
 
「Rock the Casbah」のビデオは、テキサス州オースティンで撮影された
 
 
2人のジョーは友情を育みながら、ミュージシャンとして、お互いに刺激しあっていた。かつてマーティ・ロビンズが歌ったテキサスのエルパソでジョー・イーリー・バンドとクラッシュが共演したとき、イーリーがクラッシュのメンバーを、国境の向こう側、つまりメキシコのフアレスに連れていったところ、ストラマーは本場のマリアッチ・バンドに感激して、チップに使う小銭が尽きるまで、「I Fought the Law」をリクエストしたという。
 
そんな体験も含め、イーリーとの交流はクラッシュ解散後のストラマーの活動に何らかの影響を与えたんじゃないか。『Joe  Strummer 001』を聴きながら、そんなことを考えると、いろいろと想像が膨らんで楽しい。
 
ストラマーはいつかメキシコでイーリーのバンドとレコーディングしようと考えていたという。しかし、その計画が実現することは、とうとうなかった。
 
が、80年のロンドン・コーリング・ツアーの最中、イーリーのバンドとクラッシュがロンドンのパブ、ホープ&アンカーで繰り広げたセッションを収めたテープがイーリーの手元に残っているという。
 
「アルバムにする価値がある」とイーリーは言っている。それなら、ぜひ。
 
精力的にアルバムをリリースしながら、イーリーは近年、『B4 84』や『The Lubbock Tapes: Full Circle』といった未発表音源の発掘リリースにも意欲的に取り組んでいる。権利関係をクリアにするのが難しいと思うが、2人のジョーの友情の証とも言えるセッションが日の目を見ることを願って止まない。
 
そういうテープがこの世の、どこかに存在しているというだけで、夢が膨らむじゃないか。

|

SIMONE FELICEとUKロック4人組、PEACEが説く「慈愛こそが新しいロックンロール」

Simonefelice

 
 
メンバーたちと文字通り膝を突き合わせて作ったルミニアーズの『Cleopatra』がアメリカとイギリスでNo.1ヒットになったことで、プロデューサーとしてのサイモン・フェリースのキャリアは開けていった。しかし、その一方でプロデューサー業が忙しくなったせいなのか、今年4月にサイモンがリリースした3作目のソロ・アルバム『The Projector』は、前作『Stranger』から4年ぶりの作品になってしまった。
 
 
Theprojectorjkt
The Projector / Simone Felice (New York Pro)
 
 
サイモンの歌が大好きな僕としては、シンガー・ソングライターとしての自身の活動にももっと時間を使ってほしいと思わずにいられないが、前2作を凌駕する『The Projector』の凄みを考えると、こういうアルバムはそうそう作れるものではないのかもしれない。
 
メランコリックなバラード路線という意味では、前2作と変わらないものの、『The Projector』は音数の削ぎ落とし方が尋常ではない。ジェームズ・フェリース(フェリース・ブラザーズ)、フォー・テットら、複数のゲスト・ミュージシャンを招いているにもかかわらず、大半がギター、あるいはピアノの弾き語り――それもほとんどがコードを鳴らしているだけで、フレーズらしいフレーズを奏でているわけではないんだから、よっぽど歌と歌詞に自信があったのんだろう。 
 
 
 
 
感情を殊更に露にするわけではないが、魂の躍動をにじませながら、祈るようにサイモンが歌うのは、たとえ世界が崩壊したとしても、誰にも無垢な魂を傷つけることはできないというメッセージだ。
 
信念に貫かれたサイモンの歌声に思わず胸が熱くなる。
 
ちょっとしゃがれたサイモンの歌声を包み込むアンビエンスの作り方も見事だ。レイチェル・ヤマガタ、ナターシャ・カーン(バット・フォー・ラッシーズ)が加えるバッキング・ヴォーカルとともに『The Projector』の聴きどころの一つになっている。
 
ところで、プロデューサーとして精力的に仕事をしているサイモンの最新プロデュース作が、イギリスの4人組ロック・バンド、PEACEが今年5月にリリースした3作目のアルバム『Kindness Is the New Rock and Roll』だ。
 
 
Peace PEACE
 
 
いかにもUKロック然としたPEACEとサイモンの組み合わせは、かなり意外だったが、サイモンが拠点としているウッドストックの森に囲まれた丘の上のスタジオでレコーディングした『Kindness Is the New Rock and Roll』を聴いてみると、バンドが新しいサウンドを求めていたことがよくわかる。
 
 
Kindnessjkt
Kindness Is the New Rock and Roll / PEACE (Ignition)
 
 
中でもゴスペル風のコーラスを加えた「Kindness Is the New Rock and Roll」、PEACE流のR&Bなんて言える「Silverlined」、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズを連想させる「From Under Liquid Glass」の3曲は、バンドの挑戦の成果と言ってもいい。
 
 
 
 
 
 
バンドのフロントマン、ハリー・コイザーは、「都会っ子の自分たちにとってはホビット風の経験だった」というレコーディングについて、こんなふうに振り返っている。
 
「サイモンはサウンドをまったく手掛けないんだ。その代わりに魂に入り込む。レコーディング・ブースに連れて行って、心を動かしてくれたり、キャッツキル山地にドライヴに連れ出して、松の匂いを嗅ぐんだ!さあ、小川で顔を洗ってこい!とリフレッシュさせてからまたスタジオに連れて行ってくれたりした。(自分に)あんな歌い方できるなんて思ってなかったよ。サイモンが見出してくれたんだ。実際に手で僕の胸板をマッサージして、あの声を出させてくれた」
 
ハリーが言っている「サウンドを手掛けない」というのは、サイモンはアレンジャーではないということだろう。近頃はアレンジやトラック・メイキングをプロデュースと言うことが多いが、サイモンはそういうタイプのプロデューサーではないということだ。
 
それを考えると、サイモンの影響は、音楽面だけに止まらず、精神面に表われているんじゃないか。中でも21世紀の世の中にラヴ&ピースを訴えかける「Kindness Is the New Rock and Roll」のタイトルなんて、サイモンがいかにも言いそうだ。
 
慈愛こそが新しいロックンロール――。
 
そう思って、ソングライティングのクレジットを確認したら、“Koisser / Archer / Felice”とあった(Archerは、ゲム・アーチャーか?)。因みに全10曲中、唯一の共作曲。
 
もちろん、それが誰のアイディアなのかはわからない。しかし、世界の崩壊を感じ取っているサイモンにとって、誰が言い出したにせよ、そのスローガンと言うか、メッセージは切実なものだったはず。
 
慈愛こそが新しいロックンロール。新しいロックンロールを世界中に広めるんだ――。
PEACEの4人とサイモンは、そんな使命感を胸にアルバムのレコーディングに取り組んでいたのかもしれない。
 
『Kindness Is the New Rock and Roll』は、ルミニアーズの『Cleopatra』と並ぶサイモンの代表作になるに違いない。

|

サイドマンとして活躍してきたJOHN CALVIN ABNEYの真の実力

Jca

 
 
リリースは16年だったから、「Best 10 albums 2017」には入れなかったけど、17年に一番聴いたアルバムは、オクラホマ州タルサ出身のシンガー・ソングライター、ジョン・カルヴィン・アブニーの『Far Cries and Close Calls』だったと思う。
 
 
Farcries Far Cries and Close Calls(Horton)
 
なぜ、そんなはまったのか。たぶん、それは彼が甘酸っぱいセンチメントとともに表現する寂寥感が琴線に触れたからだと思うのだが、そういう感情を決して垂れ流さずに展開のはっきりした楽曲に収める、ある意味、ウェルメイドなソングライティングもまた、聴きながら心地良かった。
 
明らかにフォーク、カントリー、ブルースの影響を根っこに持ちながら、決して土臭くならないインディ・ロック・マナーのサウンドは、エリオット・スミスやコナー・オバーストをひきあいにルーツ・ポップという言葉とともに複数のプレスから歓迎された。しかし、60年代のビート・バンドを彷彿とさせる「Jailbreak」やエネルギッシュなロックンロールの「Weekly Rate Palace」のような曲も収録した『Far Cries and Close Calls』には、ルーツ・ポップの一言だけでは表現しきれない魅力があった。
 
 
 
 
 
彼の存在に興味を持ったきっかけは、前述した「Best 10 albums 2017」に選んだジョン・モアランドの『Big Bad Luv』とポーター&ザ・ブルーボネット・ラトルスネークスの『Don't Go Baby It's Gonna Get Weird Without You』という2枚のアルバムにマルチ・プレイヤーとして参加していたことだった。
 
売れっ子プレイヤーとして、あちこちに顔を出しているならいざ知らず、かなりマニアックなベスト10に選ぶくらい大好きな2枚のアルバムに参加しているなんてと感じるものがあったので、ジョンのことを調べてみたら、ジョン・モアランドをはじめ、複数のミュージシャンのレコーディングやツアーに参加するかたわら、ソロ・アーティストとしても活動していることがわかって、慌てて、その時一番新しかった『Far Cries and Close Calls』を手に入れたところ、前述のとおりすっかりはまってしまったというわけだ。
 
今年3月にはSXSWでライヴを見ることもできた。バンドを従え、ステージに立ったジョンを見ながら、ライヴ・パフォーマーとしても華のあるアーティストであることを実感。そして、日本でももっと多くの人に彼のことを知ってほしいと思った。
 
 
S_john_calvin_abney_4_2 SXSW 2108
 
 
同郷の盟友、ジョン・モアランドがさらなる注目を集め始めたことで、17年はジョンにとっても忙しい1年になった。
 
ギタリスト/キーボーディストとして参加したモアランドのツアーは125公演を超え、ジョン・プラインやアイアン&ワインと同じステージに立つ機会をジョンに与えたが、能ある鷹は自分の爪を磨くことも決して忘れなかった。
 
モアランドと全米各地を回る一方で、ジョンはソロ・アーティストとしても精力的にステージに立ちながら、新曲を作ることにも精を出してきた。
 
その成果と言えるのが3枚目のアルバム『Coyote』だ。サンフランシスコとタルサを拠点としている新興レーベル、ブラック・メサ・レコードから5月18日にリリースされた。
 
 
Coyote_2 Coyote(Black Mesa)
 
 
『Far Cries and Close Calls』と同じアーカンソー州リトル・ロックにあるスタジオ、フェローシップ・ホールでレコーディングしながら、生々しいバンドの演奏を、その騒々しさとともにとらえた前作から一転、『Coyote』は音数を削ぎ落とした演奏を、一音一音、ていねいに録っていったことを想像させるアコースティック調の作品になっている。
 
レコーディングに参加したミュージシャンは、前作からひきつづきパディ・ライアン(ドラムス)とミーガン・パーマー(ヴァイオリン、バッキング・ヴォーカル)、そして今回、初参加となる元ドライヴ・バイ・トラッカーズのショーナ・タッカー(ベース、バッキング・ヴォーカル)の計3人。ジョンはアコースティック・ギターとキーボードの他、ハーモニカ、ヴィブラフォン、ペダル・スティール、ドラム・マシーンなどを自ら演奏している。
 
ヴァイオリンとピアノだけのインスト小品の「Leslie Lane」を含む計10曲を収録。
 
「Cowboys and Canyon Queens」と「South Yale Special」の2曲は、アコースティック・ギターの弾き語りによるトラッドなフォーク・ナンバーだが、その他の曲では音数を削ぎ落としながらトラディショナルなだけに止まらないアイディアの閃きが、ジョンの歌声とともに聴きどころになっている。
 
中でもフォーク・ナンバーにブギウギ・ピアノを加えた「Broken Bow」、打ち込みの淡々としたリズムがたそがれた風情を醸しだすフォーキーなブルース・ナンバーの「Get Your House In Order」、メランコリーが胸に染みる音響系カントリー・ナンバーの「Sundowner」の3曲は、ルーツ・ポップと謳われるジョンの真骨頂と言ってもいい。もちろん、前述したウェルメイドなソングライティングの魅力は、今回も変わらない。
 
 
 
 
“Dreamy folk with a good balance of sadness and sunshine”と評したローリング・ストーンをはじめ、すでに『Coyote』は数々のメディアからベック、エリオット・スミス、ライアン・アダムス、さらにはイギリスのロマン派の詩人であるワーズワースやバイロンをひきあいに取り上げられ、ジョンは『Far Cries and Close Calls』をリリースした時以上に注目を集め始めている。
 
それをきっかけにサイドマンとして活躍してきたジョンの真の実力が多くの人に認められることを願ってやまない。
 
因みに『Coyote』という今回のタイトルは、ジョン・モアランドがステージでジョンを紹介する時に言った“コヨーテ・トリガー”というニックネームに由来しているそうだ。
 
 
 
 
 
 
 

|

3年ぶりの新作を完成させたLUCEROのBENと映画監督として活躍している弟、JEFF――南部で生まれ育ったNICHOLS兄弟の絆とは

Lucero

 
 
結成20周年を迎えたメンフィスの5人組ロックンロール・バンド、ルセロが遂に新しいアルバム『Among The Ghosts』を完成させた。
 
リリース日は8月3日。
 
前作『All A Man Should Do』から3年ぶりのリリースとなる。
 
今回は、2012年から所属していたATOから離れ、インディペンデントのアーティストをサポートしているナッシュビルのサーティー・タイガースからのリリースであることに加え、09年の『1372 Overton Park』から『All A Man Should Do』まで3作連続でプロデューサーを務めてきたテッド・ハットに代えて、ジェイソン・イズベル、マーゴ・プライス、ドライヴ・バイ・トラッカーズ他を手掛けてきたプロデューサー/エンジニア、マット・ロス・スパングと新たに組んでレコーディングを行っている。
 
心機一転という気持ちがメンバーたちにはあるようだ。
 
『1372 Overton Park』以来、レコーディングのみならず、ツアーにも連れていっていたホーン隊と一旦別れ、結成時の4人にキーボード奏者のリック・ステフを加えた5人でレコーディングしたというから、ストレートなロック・サウンドに回帰しているに違いない。
 
その一方でバンドのフロントマンであるベン・ニコルズ(Vo, G)は曲を作るにあたって、これまで以上にストーリーテリングを意識したそうだ。
 
「Back to the Night」という曲では映画『シェイプ・オブ・ウォーター』他で知られる俳優、マイケル・シャノンがナレーションを加えているという。
 
新作のソングライティングを「シネマティック」とたとえるベンは、こう付け加えている。
 
「でも、誰も見たことがないような映画なんだ」
 
 
 
 
 
 
 
リリースに先駆け、公開された「For the Lonely Ones」「To My Dearest Wife」の2曲を聴きながら、前作からの3年の間に、それぞれに家族を持った彼らが心機一転、どんなロックンロールを奏でるのか楽しみにしている。
 
 
 
Amonghteghosts Among The Ghosts (Liberty&Lament / Thirty Tigers)
 
 
『Among The Ghosts』にはベンがソロ名義で、映画『ラビング 愛という名前のふたり』に提供した「Loving」のバンド・ヴァージョンを含む計10曲を収録。
 
その『ラビング 愛という名前のふたり』は、映画監督として活躍しているベンの弟、ジェフの5作目の作品。因みにマイケル・シャノンはジェフ・ニコルズ作品の常連俳優。「Back to the Night」の客演も納得だ。
 
Jeffandmichael ジェフとマイケル・シャノン
 
 
これまでジェフは最新作の『ラビング 愛という名前のふたり』を含め、計5本の映画を監督しているが、ベンはソロ、あるいはルセロとして、全作品に楽曲を提供している。
 
ジェフのデビュー作『Shotgun Stories』(07年)は製作費25万ドルのロウバジェット作品だったから、ひょっとしたら、音楽を作る予算がなくて、兄貴を頼ったのかもしれない。しかし、その後、ジェフは監督して成功を収め、『『MUD -マッド-』(12年)、『ミッドナイト・スペシャル』(16年)といった大きなバジェットの作品を撮るようになった。
 
音楽にだって、たっぷりと予算を掛けられるだろう。実際、劇中の音楽は、2作目の『テイク・シェルター』(11年)からずっとデヴィッド・ウィンゴを起用しているが、いわゆる挿入歌やエンディング・テーマだって、いろいろな――たとえば、有名なアーティストを使ってもいいはずだ。しかし、ジェフがエンディングを含め、特に印象的な場面ではベンやルセロの曲を使いつづけているのは、彼の作品が人気アーティストの曲が多数、流れるような派手な作品ではないこともさることながら、やはり兄弟と言うか、家族の絆を大事にしているからなんじゃないだろうか。ルセロと言えば、アメリカの南部にルーツを持っていることを誇りとしているバンドだが、そこにアーカンソー出身のジェフの兄貴に負けない南部魂を感じたりも。
 
その意味では、ベンやルセロのメンバーのみならず、マイケル・シャノンやデヴィッド・ウィンゴまた、ジェフにとっては家族と言える存在なのかもしれない。

|

JACK WHITEを魅了したESTHER ROSEの歌声

Estherrose

 
 
カレン・エルソン、オリヴィア・ジーン、マーゴ・プライス、リリー・メイ、そしてエスター・ローズ。
 
彼女たちの共通点は?
 
ジャック・ホワイトの話題の新作『Boarding House Reach』を聴きながら、ソウル・バラードの「What’s Done Is Done」でジャックとデュエットしている女性シンガーは誰だろうと思って、ブックレットをチェックしみたら、「Esther Rose: Backing Vocals」とあってちょっとびっくりした。
 
 
Jackwhiteband_2 左から3人目がエスター
 
 
エスターとジャック。2人はいつどこで、どうつながったんだろう?
 
エスター・ローズはニューオーリンズを拠点としているシンガー・ソングライター。
 
僕が彼女の存在を知ったのは、ニューオーリンズのシンガー・ソングライター/ギタリスト、ルーク・ウィンズロウ・キングが13年にリリースした『The Coming Tide』というアルバムだった。
 
ブルース、オールドタイミーなジャズ、フォーク、ロックンロールが渾然一体となったそのアルバムでヴォーカルとウォッシュボードを担当していた彼女の名前は、アルバムのジャケットにも「featuring ESTHER ROSE」としっかりクレジットされ、彼女に対するルークの信頼の大きさが窺えた。
 
翌14年、ルークがリリースした『Everlasting Arms』というアルバムでエスターはルークとともにアルバム・カヴァーに登場。「ESTHER ROSE KING」というクレジットが公私にわたるパートナーとなった2人の蜜月を物語っていた。
 
しかし、蜜月はそれほど長くは続かず、2人は離婚。ルークが16年9月にリリースした『I’m Glad Trouble Don’t Last Always』は、エスターへの未練を歌ったブルージーなアルバムだった。
 
その後、エスター・ローズ名義でソロ活動を始めた彼女はデズロンズ、ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ、ポーキー・ラファージらとステージに立ちながら、17年6月に1stソロ・アルバム『This Time Last Night』をリリース。デズロンズのキャメロン・スナイダー(Dr)ら、ニューオーリンズのカントリー・シーンのミュージシャンたちとレコーディングしたそのアルバムは、人生に躓いた時に学んだことや一つ一つの障害を乗り越えてきた彼女の経験の記録なんだそうだ(ルークのアルバムとは正反対と言える内容がなんとも)。
 
 
Esterrosejkt This Time Last Night
 
 
カントリーを基調としながら、オールドタイミーなジャズやR&Bの影響が入り混じるところがいい。そこがニューオーリンズ、いや、エスター・ローズならではなのだろう。気取りのない奔放な歌声も魅力的だ。
 
 
 
 
 
結局、ジャックのアルバムに参加した経緯はわからないままだが、エスターの存在が多くの人に知られるきっかけになったらうれしい。
 
カレン・エルソン、オリヴィア・ジーン、マーゴ・プライス、リリー・メイ――ジャックに見出され、彼のレーベル、サード・マンからソロ・デビューした女性アーティストは少なくない。ひょっとしたら、エスターも?!
 
女性を見るジャックの目は知らない。しかし、女性アーティストを見る目は信頼している。
 
 
 
 

|

LAST HURRAH 2.0 presents Best 10 albums 2017 ②

Photo_2

 
 
昨年にひきつづき、ルーツ・ロック~アメリカーナをテーマに(でも、そこはゆる~く)2017年のベスト・アルバムを10枚ずつ選んでみたところ、今年もまた、他にはないおもしろいベスト10になりました。その第2弾です。
 
 
 
 
【New West Recordsの活躍が目立つなど、17年も好作続き】
by 山本 尚
 
 
Raydavis
➀ Americana / Ray Davies (Legacy)
 
 
Hurray_2
② The Navigator / Hurray for the Riff Raff (ATO)
 
 
Thesadies
③ Northern Passages / The Sadies (Yep Roc)
 
 
Nikkilane_3
④ Highway Queen / Nikki Lane (New West)
 
 
Joanshelley
⑤ Joan Shelley / Joan Shelley (No Quarter)
 
 
Sonvolt
⑥ Notes of Blue / Son Volt (Transmit Sound)
 
 
Sammybrue
⑦ I Am Nice / Sammy Brue (New West)
 
 
Kacy
⑧ The Siren's Song / Kacy & Clayton (New West)
 
 
Banditos
⑨ Visionland / Banditos (Bloodshot)
 
 
Old_2
⑩ Graveyard Whistling / Old 97's (ATO)
 
17年も好作続き! ①はThe Jayhawksがバック・バンドを務め、このタイトル。もちろん期待を裏切らないアルバムでした。これからも長く聴き続けるであろう。
 
②~⑤はライヴも見たけれど、ライヴも最高。特にHurray~とNikkiのステージでの存在感には度肝を抜かれた。
 
Jeff Tweedyプロデュースの⑤と⑧はテイストは違うけれど好作。ギターのフレーズ、音作りにJeffのこだわりを感じ、Wilcoと共に彼のプロデュース作品にも注目していきたい。
 
⑦は新人らしからぬ曲のクオリティーとアレンジで注目。LAST HURRAH 2.0でも紹介されたので、是非、読んでほしい。
 
レーベルで言えば、17年はNew West Recordsの活躍が目立ったな~と。いいアルバムを立て続けに出してくれた。
 
そしてTom Petty含め、17年も悲報が続いたけれどTomの最後のツアーを見られたことは本当に良かった…と思った17年でした。
 
18年はFirst Aid Kitの新作、そしてVan WilliamとPearl Charlesのデビュー・フル・アルバムが楽しみです!
 
 
 
 
 
【“アラバマ・ブーム”の一方でガツンと来るバンドが少なかった】
by 山口 智男
 
 
Caletyson
■ Careless Soul / Cale Tyson (At Last)
 
 
Curtisharding
■ Face Your Fear / Curtis Harding (Anti-)
 
 
Thedeslondes
■ Hurry Home / The Deslondes (New West)
 
 
Dorifreeman
■ Letters Never Read / Dori Freeman (Blue Hens Music)
 
 
Jakebugg
■ Hearts That Strain / Jake Bugg (Virgin)
 
 
Johnmoreland
■ Big Bad Luv / John Moreland (4AD)
 
 
Lilliemae
■ Forever And Then Some / Lillie Mae (Thirdman)
 
 
Michaelchapman
■ 50 / Michael Chapman (Paradise of Bachelors)
 
 
Porter
■ Don't Go baby It's Gonna Get Weird Without You / Porter & The Bluebonnet Rattlesnakes (Cornelius Chapel)
 
 
Robertfinley
■ Goin' Platinum! / Robert Finley (Easy Eye Sound)
(アルファベット順)
 
FAMEスタジオに詣でたCale Tysonをはじめ、振り返ってみれば、17年は“アラバマ産”の作品に惹かれるものが多かった。そんな“アラバマ・ブーム”は、まだまだ続きそうだ。
 
個人的なものとは言え、毎年、何かしらブームが生まれるのは、それだけシーンが盛んということだろう。10枚を選びながら、泣く泣く落とした作品は少なくない。
 
唯一残念だったのは、個人的にガツンと来るバンドが少なかったこと。
 
自分で選んだ10枚を見返して、ソロ・アーティストの作品ばかりが並んでいることに、こんなにバンドが好きなのに…とちょっと唖然。ダントツで良かったThe Deslondesの他は、Lee Bains III +The Glory Firesと、アルバムを2枚、同時リリースして、気を吐いたDeer Tickぐらいか。Dan AuerbachもIan Feliceもソロ名義だった。
 
18年は、もっとバンド勢に、おおっと言わせてもらいたい。
 
 
 
 
 
 
 

|

LAST HURRAH 2.0 presents Best 10 albums 2017

Photo

 
 
昨年にひきつづき、ルーツ・ロック~アメリカーナをテーマに(でも、そこはゆる~く)2017年のベスト・アルバムを10枚ずつ選んでみたところ、今年もまた、他にはないおもしろいベスト10になりました。
 
 
 
 
【まだまだある。エンドレスで挙げられるほど豊作だった17年】
by 早川 哲也
 
 
Images
■ After You’ve Gone / Legendary Shack Shakers (Last Chance)
 
 
Images_5
■ Tigre-Teigne / Le Skeleton Band (Head)
 
 
Images_6
■ Boy In A Well / The Yawpers (Bloodshot)
 
 
Scotthbiram
■ The Bad Testament / Scott H. Biram (Bloodshot)
 
 
Images_7
■ Songs Of Love And Death / Me And That Man (Cooking Vinyl)
 
 
Nikkilane
■ Highway Queen / Nikki Lane (New West)
 
 
Images_8
■ Sunnyside / Jake La Botz (Hi-Style)
 
 
Images_9
■ A Girl Like You / Emanuela Hutter (Emanuela Hutter)
 
 
Images_10
■ Gilded / Jade Jackson (Anti-)
 
 
Images_11_2
■ Bad Hombre / Bob Wayne (People Like You)
 
(順不同)
 
 
昨年同様にアメリカーナ枠内ギリギリなモノも混じっているが、ルーツ系から選んだ10枚。
 
他にEarle親子それぞれの新作、The Sadies、Coco Hames、Bash & Pop、JD Mcpherson、Dan Auerbach、Kitty, Daisy & Lewis、Lillie Mae、Margo Price、Eric Ambel、Imelda May、Old 97's、The Builders and the Butchers、Guadalupe Plata、Low Cut Connie …。
 
まだまだあるなぁ。振り返れば、ルーツ系は豊作だった17年。
 
18年はLAST HURRAAH 2.0でも取り上げたEasy Eye Sound作品に期待。
 
嗚呼エンドレス…。
 
 
 
 
【平和や平等のために立ち向かい、闘っているような女性の姿に胸を打たれた】
by 堀口 知江(ホリグチ チエ)
 
 
Scotthbiram_2
■ The Bad Testament / Scott H. Biram (Bloodshot)
 
 
Images_2
■ Spades and Roses / Caroline Spence (Tone Tree Music)
 
 
Old
■ Graveyard Whistling / Old 97's (ATO)
 
 
Images_3
■ After You've Gone / Legendary Shack Shakers (Last Chance)
 
 
Images_1
■ Freedom Highway / Rhiannon Giddens (Nonesuch)
 
 
Hurray
■ The Navigator / Hurray for the Riff Raff (ATO)
 
 
Nikkilane_2
■ Highway Queen / Nikki Lane (New West)
 
 
Images_3_2
■ Ivory Castanets / Cat Clyde (Cinematic)
 
 
Images_4
■ You Don't Own Me Anymore / The Secret Sisters (New West)
 
 
Unnamed
■ Sidelong / Sarah Shook & the Disarmers (Bloodshot)
(順不同)
 
 
Rhiannon GiddensやHurray for the Riff Raffのように、平和や平等のために立ち向かい、闘っているような女性の姿に胸を打たれました。
 
中でもRhiannon Giddensの「You can take my body, you can take my bones / You can take my blood but not my soul」というフレーズは印象的で、いまの米国社会の動きを象徴しているように感じ取りました。
 
女性アーティストが多くなってしまいましたが、Justin Townes EarleやSammy Brue、Dan Auerbachも良かったです。あとLillie Maeも!
 
18年はRuby BootsやJD Wilkesのリリースが楽しみです!
 
 
 
 

|

2018年はこれを聴く! DAN AUERBACHと彼のレーベル、EASY EYE SOUNDの新展開に注目!

Danauerbach

 
 
ミュージシャンとして活躍するかたわら、いつ休んでいるの?!と不思議になるくらいプロデューサー業、スタジオ経営にも精を出すダン・オーバックがそれだけでは飽き足らないと言わんばかりに今度は、所属レーベルであるノンサッチで自分のレーベルを始めてしまった。
 
レーベル名は、ナッシュビルにある彼のスタジオの名前と同じEasy Eye Sound。ここを拠点に自分がかっこいいと思う音楽を送り出していこうと考えているのだろう。
 
レーベルとしてのEasy Eye Soundのリリース第1弾は、今年6月にリリースした自身のソロ・アルバム『Waiting On A Song』(EES-001)。
 
 
 
Danauerbach_2 Waiting On A Song / Dan Auerbach
 
 
 
 
 
それから6か月、12月8日には昨年、63歳でミシシッピのレーベル、Big Legal Messから『Age Don't Mean A Thing』でデビューしたブルース/R&Bのシンガー・ソングライター/ギタリスト、ロバート・フィンリーによる2作目のアルバム『Goin' Platinum!』(EES-002)を、ダン自らのプロデュースでリリースした。
 
 
Robert_finley_goin_platinum_ees_0 Goin' Platinum! / Robert Finley
 
 
これが素晴らしい作品だった。
 
ダンはロバートの歌をもっと多くの人に聴いてほしいと考えたのだろう。Big Legal Messのヘッドであるブルース・ワトソンとジンボ・マサスがプロデュースした前作のサザン・ソウル路線を受け継いだうえで、新たに女性コーラスを巧みに使ったキャッチーなアレジを加え、彼の歌をより多くのリスナーにアピールできるものにしたのは、まちがいなくダンの手腕だ。
 
 
 
 
正直、ダンのプロデュースワークは、ハマる時とハマらない時があると思うのだが、『Goin' Platinum!』は見事にハマった。ダンのソロ同様にポジティヴなヴァイブに満ち溢れているようなところもいい。
 
Easy Eye Soundの今後のリリースががぜん楽しみになってきた。
 
すでにEasy Eye Soundのウェブサイトでは、シャノン&ザ・クラムスの『Onion』、ソニー・スミスの『Rod For Your Love』という2月、3月のリリースが発表されている(その後、4月にはリンク・レイの未発表曲「Son of Rumble (/Whole Lotta Talking)」を7インチ・シングルとしてリリースする)。
 
 
 
Shannonandtheclamsonion1200_2 Onion / Shannon & The Clams
 
 
Sonny_smith_rod_for_your_love_0c260 Rod For Your Love / Sonny Smith
 
 
シャノン&ザ・クラムスは、オールディーズな魅力もあるオークランドのガレージ・パンク4人組。『Onion』はすでに8年ほどの活動歴を持つ彼らの5作目のアルバムとなる。
 
 
 
 
ソニー・スミスは、サンフランシスコのシンガー・ソングライター。その活動は90年代の半ばまで遡ることができるらしい。07年にはサンフランシスコのインディー・シーンのミュージシャン達とローファイ・ガレージ・バンド、ソニー&ザ・サンセッツを組んで、多くの作品をリリースしてきた。
 
 
 
 
『Onion』『Rod For Your Love』ともにダンによるプロデュース。
 
ベイエリアのインディー~ガレージ・シーンに急接近した新たなコネクションが興味深い。
 
それが今後、どんな活動につながるのか、ジャック・ホワイトのサード・マンに負けないものになるのかという興味も含め、ダンとEasy Eye Soundの動きに注目していきたい。
 
ダンは2月10日のヴァンクーバー公演を皮切りに「Dan Auerbach & the Easy Eye Sound Revue」と銘打ち、ロバート・フィンリー、シャノン&ザ・クラムスらと4月5日のデンヴァー公演まで北米各地をツアーする予定だ。
 
 

|

より以前の記事一覧