音楽

THE LIVING ENDのフロントマン、CHRIS CHENEYがソロ・アルバムを完成させていたなんて!

Livingend

真ん中がクリス。今年2月~3月には『アメリカン・イディオット(ミュージカル)』のオーストラリア版に出演した。
 
 
ちょっとした理由があって、スカイラー・ウィルソンというナッシュビルのプロデューサー/ミュージシャン/コンポーザーについて調べようと思って、彼が参加した作品を年ごとにまとめた一覧を見ているとき、2017年の欄に
 
Chris Cheney (of The Living End), TBA: Producer, Composer, Performer
 
という記述を見つけた。
 
ええっ。それって、つまり日本でも根強い人気を誇るパンカビリー・バンド、リヴィング・エンドのフロントマンであるクリス・チェニーがスカイラー・ウィルソンとソロ・アルバムを作ったということでしょ?
 
彼がソロ・アルバムを作っていたなんて、全然、知らなかった。調べてみると、14年頃から温めていたアイディアを、16年の頭、ナッシュビルでウィルソンとともに形にしたということらしい。
 
レコーディングにはスコット・オーウェン、アンディ・ストラッカン――すなわちリヴィング・エンドのベーシストとドラマーも参加した。
 
16年9月、クリスがwww.news.com.auで語ったところによると、ソロ・アルバムにはアコースティック・ナンバー6曲とバンド編成でレコーディングした5、6曲が収録される予定で、カントリーの影響に加え、ビートルズ風のポップ要素や、ほとんどバラードと言ってもいい曲もあるそうだ。
 
「リヴィング・エンドとはかけ離れているんだ。彼ら(スコットとアンディ)も気に入ってくれているよ。リヴィング・エンドのようなサウンドじゃないところも含めね。(リヴィング・エンドのファンの)みんなが期待しているものとは違うんだ」
 
クリスの繊細な一面が表れた作品になっているようだ。
 
 
 
 
レコーディングしてからすでに1年が過ぎたが、ソロ・アルバムがいつリリースされるかはまだ発表されていない。現在、リヴィング・エンドはイギリス~ヨーロッパ・ツアーの真っ最中。それが終わると、8月、9月と2か月かけて北米を回る。
 
ソロ・アルバムのリリースは、バンドの活動がひと段落してからだとは思うが、果たしてその日は来るんだろうか? 18年はデビュー・アルバムのリリース20周年になるから、バンドの活動はさらに忙しいものになりそうだ。
 
リリースするならその前しかないんじゃないか?! リリースするタイミングを逸したまま、お蔵入りするなんてことにならないことを祈りつつ、今年中の、どこかのタイミングでリリースされることを願っている。

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デビューから10年、JUSTIN TOWNES EARLEが自らの殻を破ることに挑んだ

Jte

 
 
サポート・アクトおよびバッキング・バンドにセイディーズを迎え、計24都市を回った春のUSツアーが素晴らしかったに違いないジャスティン・タウンズ・アールが5月26日にリリースした7thアルバム『Kids In The Street』がマイク・モギスによるプロデュースだったなんて、実際にCDを手に取るまで知らなかった。
 
しかも、レコーディングはネブラスカ州オマハにモギスが所有しているスタジオ、ARCで行われた。つまり、ジャスティンはナッシュビルからオマハくんだりまでわざわざ出かけていったわけだ。
 
これまで自分が拠点としているナッシュビルの界隈と言うか、人脈の中でアルバムを作ってきたジャスティンがこれまでとは畑がちょっと違うプロデューサーと組んだところに自ら殻を破ろうとしたことが窺える。ご存じ、マイク・モギスはコナー・オバースト率いるブライト・アイズのメンバー兼プロデューサーだ。プロデューサーとしては、ブライト・アイズをはじめ、インディー・ロックおよびインディー・フォークのアーティストの作品を多数、手掛けている。
 
ジャスティンのセルフ・プロデュースによるナッシュビル録音だった『Single Mothers』(14年)と『Absent Fathers』(15年)の2部作も、テキサス州デントンのインディ・ロック・バンド、セントロ・マティックのリズム隊を起用していたことを考えると、自ら殻を破ろうとした作品だったのかもしれない。そこで手応えをつかんだのか、それとも物足りなかったのか。今回はレコーディングする環境もがらっと変え、前2作の試みをさらに推し進めたようだ。
 
因みに参加ミュージシャンの顔ぶれも、ジャスティンの作品にはもはや欠かせない存在と言ってもいいナッシュビルのベテラン、ポール・ニーハウス(ギター、ペダル・スティール)以外は一新。モギス人脈のミュージシャンに変わっている。
 
結果、ジャスティンのキャリアに新しい風が吹いたことを印象づけるアルバムが完成した。
 
 
 
 
ジャスティンのアイディアだったのか、モギスのサジェスチョンだったのか。ジャスティンというと、カントリーに加え、12年発表の4thアルバム『Nothing’s Gonna Change The Way You Feel about Me Now』(12年)でがっつりと取り組んだソウル・ミュージックのイメージがあるが、今回は曲ごとに趣向を変えた多彩なアレンジが、『Kids In The Street』を聴きごたえあるものにしている。
 
いかにも電気ビリビリって感じのギターの音がかっこいいロックンロールがあったり、ボブ・ディラン風のフォーク・ロックがあったり、ニューオーリンズ風のR&Bがあったり、ウェスタン・スウィングがあったり、弾き語りと電化両方のブルースがあったり――アップテンポの曲が多いせいなのか、それとも新しいタイプの曲に挑戦しているからなのか、いつもは憂いを含んだジャスティンの歌声も今回はずいぶんと生き生きとしているように聴こえる。ノスタルジックなカントリー・ナンバーの出来もいい。その味わい深さは格別だ。
 
『Kids In The Street』を聴いてしまうと、2部作という意欲作だったにもかかわらず、『Single Mothers』と『Absent Fathers』はちょっと覇気に欠けていたようにも感じられる。
 
10年に一度、活動を休んでリハビリに専念してから、ジャスティンの活動はすこぶる順調だったから、復活という言葉は当てはまらないかもしれない。しかし、順調すぎるあまり、どこかわくわくするような感覚が足りなかったこの数年を思えば(それはジャスティン自身、感じていたんじゃないか。だからこそのオマハ行きだったはず)、今後、ジャスティンのターニングポイントとして記憶されるに違いない『Kids In The Street』の鮮烈な印象に対しては、復活という言葉を使ってもいいんじゃないか。筆者はそんな気がしている。少なくともジャスティンに対する筆者の興味は、『Kids In The Street』をきっかけに、これまで以上に強いものになっている。
 
ドラムの音の処理やアンビエンスを意識した音響、演奏に加えた鉄琴の音色など、モギスによるものと思しき細かい音作りも『Kids In The Street』の一つ。モギスもジャスティンの熱意に応え、いい仕事をしている。
 
 
 
Jtejkt
Kids In The Street (New West)

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4ADが惚れ込んだ異色の巨漢シンガー・ソングライター、JOHN MORELAND

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15年発表の『High On Tulsa Heat』で跳ね上がったジョン・モアランドの人気は今回、4ADから新作『Big Bad Luv』をリリースしたことで、さらに上がるに違いない。
 
斯く言う筆者も『High On Tulsa Heat』を聴き、見た目からの連想を裏切らないモアランドの無骨な歌心に魅了された一人だが、彼が4ADと契約したと聞いた時は、正直、自分の耳を疑った。なぜなら、モアランドは4ADのレーベルカラーと最も遠いところにいる存在だと思ったからだ。
 
バウハウスやコクトー・ツインズが輩出した頃のゴシック色は、かれこれ35年以上も前の話だが、所属アーティストの顔ぶれがどんなに変わっても、4ADには確固たるレーベルカラーがあった。
 
ひょっとしたら、モアランドが時折漂わせる退廃的というイメージは共通しているかもしれない。しかし、かつてここまでアメリカーナ色の濃い、見るからに暑苦しいアーティストが4ADに所属したことがあっただろうか?
 
モアランドの圧倒的な存在感を考えると、彼一人で4ADが40年近くかけて作り上げてきた、このレーベルならではの美学を覆してしまう恐れもあったかもしれない。しかし、それでも4ADはモアランドを迎え入れた。つまり、そこまでモアランドの才能に惚れこんでいたということだ――と、ここでは嘯いてみたい。
 
オクラホマ州タルサを拠点にしているジョン・モアランドは、85年6月生まれの32歳。
 
13歳の時にパンク~ハードコア・バンドを始めた彼は19歳の時、父が聴いていたスティーヴ・アールの歌にショックを受け、シンガー・ソングライターに転向した。
 
「04年にスティーヴ・アールが『Revolution Starts Now』をリリースしたんだ。その中の「Rich Man's War」という曲を聴いた時のことはいまだに忘れられないよ。誰かに胸を殴られたような気がしたんだ」
 
以来、その胸を殴られるような感覚を追い求めながら曲を書き続け、2年に1枚というペースでアルバムをリリースしてきた。
 
今回、4ADからリリースした『Big Bad Luv』は、ソロ名義でリリースする4作目のアルバムだ。自主リリースだった前作『High On Tulsa Heat』は実家のリビングルームで、両親の留守中に友人達の助けを借りながらも、ほぼ一人でレコーディングしてしまったが、今回はアーカンソー州リトル・ロックにあるちゃんとしたスタジオで、プロのエンジニアとともにレコーディングした全11曲を収録。レコーディングには『High On Tulsa Heat』にも参加していたジョン・カルヴィン・アブニー(ピアノ、ギター)、ジャレッド・タイラー(ドブロ)らに加え、ルセロのリック・ステフ(ピアノ)、シャヴェルズ&ロープ、ドウズのメンバーも駆けつけた。
 
 
 
 
賑やかだったに違いないスタジオの空気を反映しているせいなのか、モアランドがにわかに吹き始めた追い風を感じていたせいなのか、『Big Bad Luv』は前作の寂寥感に代わって、溌剌とした躍動感が聴きどころと言える作品になっている。
 
弾き語りの曲は別として、大半の曲をバンド・スタイルでレコーディングしたことも大きようだ。その意味では、ギター、ベース、ドラムスという基本編成にサポート・ミュージシャンがオルガン、ピアノ、ペダル・スティール、ドブロの音色を加えたことでリッチになったアンサンブルも聴きどころだろう。
 
筆者も含め、1曲目を飾る軽快なロックロールの「Sallisaw Blue」に驚いたファンも多かったと思うのだが、海外では“これまで悲嘆、喪失、孤独を歌っていたモアランドが希望と言ってもいい一筋の光も歌い始めた”と評判になっている。
 
「そんなに違う曲を書いているとは思わない。これまでだってポジティヴな要素は常にあった。それは明るいとは言えない曲でさえもね。少なくとも、俺の曲は自分が前に進むためにネガティヴな感情を追い払うためのものだった。ひょっとしたら、リスナーにもそれと同じ経験をしてもらえるかもしれない。その気持ちは今も変わらない。ポジティヴなものだと思う。今回のアルバムは確かに姿勢の変化はあるかもしれない。だけど、曲を作る時の俺の視点は変わってはいないんだ」
 
明るくなったかどうかはともかく、前述したようにアンサンブルがふくよかになったぶん、確実にこれまでよりも聴きごたえあるものになった。より多くの人に聴いてもらえるに違いない、このタイミングでそういう作品を作ったことには意味がある。
 
「バーの片隅で歌えればいいと思っていた。100ドル稼いで、家に帰って、翌朝、仕事に出かける。それで十分だった。だから、今、こんなことになるなんて思ってもいなかった。だけど、その一方では、こうなることを期待していたんだ。自分にはそれだけの才能があると感じていた。俺には常に自信があったよ。そう思うべきではない時でさえね」
 
4ADがどうしても契約したかったジョン・モアランドという才能に、ぜひ注目を。
 
吠えるように歌う嗄れ声も見た目もインパクトなら誰にも負けてはいない。
 
 
 
Johnmorelandjkt
Big Bad Luv (4AD)

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KINGS OF LEONに見出されたTHE WEEKSがアメリカーナをシンボライズするやり方

Theweeks

 
今年の3月、SXSWでウィークスのライヴを見たとき、ヴォーカリストのカイル・バーンズが腰にナイフをぶら下げていてちょっとびっくりした。
 
刃渡り10センチぐらいだろうか。革のケースに入っていたからはっきりとはわからない。
 
これ見よがしにぶら下げていたわけでも、逆に隠し持っていたわけでもないから、アクセサリーでも凶器でもないのだろう。
 
アメリカ人って我々日本人よりも日常生活の中でナイフを使うことが多いように思うし、町と町の間に砂漠や森林が広がるアメリカを、小さなヴァンでツアーしていたら、いろいろな場面でナイフが必要なこともあるのだろう。
 
そういう意味では実用品なのだと思うが、ステージに立つ時ぐらいは、どこかに置いておいてもよさそうだ。それにもかかわらず、腰にぶら下げているってところにアメリカを、強烈に感じずにいられなかった。
 
それもまた一つのアメリカーナと言ってみたい――。
 
ウィークスは06年結成の4人組。双子のカイルとケイン(Dr)のバーンズ兄弟を中心に集まったメンバー達は結成当時、まだ14~15歳だったという。
 
元々はミシシッピ州ジャクソンを拠点にしていたが、キングス・オブ・レオンに見出され、ナッシュビルに移住。彼らのオープニング・アクトとして、アリーナのステージに立ったり、彼らのレーベル、Serpents And Snakesから作品をリリースしたりしてきた。
 
13年にSerpents And Snakesからリリースした『Dear Bo Jackson』はデビュー当時、グランジ版サザン・ロック・バンドと謳われたウィークスがR&B、ソウル・ミュージック、ファンクの影響を取り入れながら、改めてアメリカの南部で生まれ育ったミュージシャンとしてのアイデンティティーを打ち出した作品だった。
 
 
『Dear Bo Jackson』収録の「Kign Sized Death Bed」のMV。ニッキー・レーン客演している
 
それから3年8か月。活動を止めてしまったSerpents And Snakesからレーベルを、ライトニング・ロッドに移して、今年4月、ウィークスがリリースした3rdアルバム『Easy』はスタジオで作り込んだ前作の反動なのか、ライヴを意識したストレートなロック作品に回帰している。
 
『Easy』収録の「Talk Like That」
 
曲によっては前作で取り入れたホーン・セクションもフィーチャーしているが、メンバー達はメンフィスにあるアーデント・スタジオでレコーディングしている間、シン・リジー、T-レックス、ZZトップ、そしてメンフィスのローカル・ヒーロー、ビッグ・スターのレコードを聴いていたそうだ。
 
「俺達はただロックのレコードを作りたかっただけだ。サザン・ロックのレコードを作ろうなんて思っていたわけじゃない。南部っぽい要素はいつだって俺達がやることの一部になるんだ」
 
ベーシストであるダミエン・ボーンによるこの言葉からは、アメリカの南部にしっかりと根を張ったバンドならではの誇りが感じられる。
 
 
Theweeksjkt
Easy (Lightning Lod)

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JACK WHITEのTHIRD MAN RECORDSが契約したJOSHUA HEDLEYって誰だ

Joshuahedley

 
一言で言えば、新たなアウトロー・カントリーのスターだ。
 
ナッシュビルの新世代アウトロー・カントリー・シーンを記録したドキュメント映画『Heartworn Highways Revisited』でジャスティン・タウンズ・アールジョン・マッコーリー(ディアー・ティック)ニッキー・レーンらとともにジョシュア・ヘドリーを取り上げた監督のウェイン・プライスは、彼についてこんなふうに言っている。
 
「町の誰もがあいつのことが大好きだし、本物だって知っているんだ。あいつがフロントマン、もしくはソロ・アーティストになりたいなら、そうなれるよ。だって、あいつには、その才能があるんだからね」
 
 
 
 
フィドル・プレイヤーとして、8歳の頃からステージに立ってきたという。
 
その後、ジャスティン・タウンズ・アールジョニー・フリッツのサポート・ミュージシャンとして、ナッシュビル・シーンで頭角を現してきた。そんなジョシュアの存在は昨年11月、米ローリング・ストーン誌の「10 New Country Artists You Need To Know」に取り上げられたことをきっかけに、より多くの人に知られることとなった。
 
筆者もその記事を読んで、ジョシュアの存在に気づいた一人。慌ててチェックしてみたら、ジャスティン・タウンズ・アールジョニー・フリッツの作品のみならず、ニッキー・レーンラングホーン・スリムのアルバムでも彼のプレイを知らず知らずのうちに耳にしていた。
 
サイドマンとして活躍するかたわら、ソロ・シンガーとしても活動し始めたジョシュアはフィドルのみならず、歌声の魅力も買われ、今回、レーベルメイトになったマーゴ・プライスの『Midwest Farmer’s Daughter』やアラバマのラッパー、イェラウルフのシングル「Shadows」ではヴォーカリストとして客演している。
 
 
 
 
 
 
 
 
契約を結んだことが発表されただけで、サードマンからのデビューがいつになるとか、それがどんな作品になるのかとか、具体的なことはまだ何一つわからないが、サードマンと契約した日にジョシュアが発表したコメントからは、彼の気骨とともにミュージシャンとしての信条が窺える。
 
「フィドルを初めて手にした時から今この瞬間まで、俺がやりたかったのは音楽を作ることと、それを世界中の人達と分かちあうことだった。山あり谷ありの長い道のりだったけど、途中であきらめようとも思わなかったし、セルアウトしたこともないし、誰かのために自分を変えたこともない。俺はあらゆることを自分がやりたいにようにやってきた」
 
それに、ともに素晴らしい作品だったマーゴ・プライスの『Midwest Farmer’s Daughter』とリリー・メイの『Forever And Then Some』がすでにアーティストを選ぶジャック・ホワイトの目の確かさを証明しているんだから、ジョシュアがこれからリリースする作品だって大いに期待して良さそうだ。
 
 
Jackjoshua
 
 
65年のカントリーが理想と語りながら、それだけに止まらないジョシュア・ヘドリーならではのカントリー・ソングを届けてくれるに違いない。

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見た目のインパクトもやっぱり大事だよね(その2): JACK WHITEを虜にした26歳のベテラン・シンガー・ソングライター、LILLIE MAEが遂にソロ・デビュー

Lilliemae

 
いきなりモヒカンっていうのは、これまでフェミニンな印象があったからけっこうびっくりだった。
 
ソロ・アーティストとして本格的にキャリアをスタートさせる闘志の表れなのか、それとも単純にファッションなのか。いずれにせよ、そんなイメチェンは、リリー・メイこと、リリー・メイ・リーシュのソロ・デビューを、より一層鮮烈なものにした。
 
 
 
ジャック・ホワイトの2ndソロ・アルバム『Lazaretto』で、その歌声を聴き、あるいは、ジャックのバッキング・バンドのメンバーとして、ステージでフィドルをプレイするだけに止まらず、ジャックとデュエットする姿を見て、リリー・メイの存在を知ったという人は多いと思う。
 
彼女のソロ・デビュー・アルバム『Forever And Then Some』は、そのジャック・ホワイトのよるプロデュース。ジャックのレーベル、サード・マンからのリリースだ。だから、ロック界の寵児に見出されたシンデレラガール。最初はリリー・メイのことを、そんなふうに考えていた。
 
しかし、そんなに簡単にチャンスを掴めるほど甘い世界ではない。旅回りのミュージシャンである親の下、3歳の頃から兄、姉とともに人前で歌ってきたというリリー・メイもまた、ここに来るまでいくつかの壁を乗り越えてきた。
 
たとえば、06年、リリー・メイが16歳の時、ナッシュビルで兄、姉達と組んだバンド、ジプシー(JYPSI)。
 
リリー・メイがリード・ヴォーカルを務めたジプシーはローカル・シーンで注目され、08年、セルフタイトルのアルバムでメジャー・デビュー。アルバムからは「I Don’t Love You Like That」のスマッシュ・ヒットも生まれた。しかし、レコード会社が理想と考えるイメージを押しつけられる活動は、メンバー達にとって満足できるものではなかった。デビュー・アルバムもバンドによるオリジナル曲は、リリー・メイの兄、フランクによる「Kandi Kitchen」1曲だけで、「I Don’t Love You Like That」を含むその他の10曲はすべて外部のソングライターによるものだった。 
 
 
Jypsi JYPSI 一番右がリリー・メイ
 
 
やがて、リリー・メイはジャック・ホワイトと活動を共にしはじめるが、曲はずっと作り続けていたようだ。ツアー中、彼女が楽屋で作っていた曲をたまたま耳にしたジャックのバックアップによって、作りためていた曲の数々が遂に日の目を見ることになった。
 
14年、サード・マンから7インチ・シングル「Nobody’s (b/w The Same Eyes)」をリリース。その後、ケネス・ブライアン・バンドとアラバマでレコーディングしたアルバムを、15年2月にリリースするはずだったが、結局、その話は流れてしまった。
 
それから『Forever And Then Some』をリリースするまで2年かかっていることを考えると、今回のソロ・デビューは、やはり“念願の”という言葉がふさわしいと思うし、冒頭に書いたイメチェンもやはり――。
 
3曲のレコーディングからスタートしたのち、ジャックの「もっと曲はないの?あるでしょ」という言葉からアルバムに発展したという『Forever And Then Some』にはかつてジプシーを一緒にやっていたリリー・メイの兄、フランク(ギター)と姉、スカーレット(マンドリン)がほぼ全曲で参加している。もしかしたら、ジプシーの再現、あるいは自分達が思うように活動ができなかったジプシー時代のリベンジなんて思いも多少はあるんじゃないかなんて思ったりも。
 
『Forever And Then Some』はリリー。メイのバックボーンであるカントリー、ブルーグラスの影響がストレートに出た気持ちのいい作品だ。ジャック・ホワイトもよけいなものを加えず、彼女の魅力をそのままとらえようとしたようだ。演奏の中に耳に残るフレーズが多いのは、ひょっとしたらジャックのサジェスチョンかもしれない。コケティッシュなリリー・メイの歌声もとても魅力的だ。
 
唯一、モダンな雰囲気があるラスト・ナンバーの「Dance To The Beat Of My Own Drum」は、アルバムの異色曲なのか、それとも今後の変化の布石なのか。それも楽しみの一つと考えながら、彼女の今後の活躍を追っていきたい。
 
 
 
Lilliemaejkt
『Forever And Then Some』(Third Man)

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見た目のインパクトもやっぱり大事だよね(その1):オンタリオの森からやってきたブルース・シンガー、CAT CLYDE

Catclyde

 
ぱっつん前髪と鼻の輪っかピアス。それに腕に入ったタトゥー。まずは、そんなルックスに惹かれた。
 
トロントから100キロほど西に位置するオンタリオ州ストラトフォード出身の女性シンガー・ソングライター、キャット・クライド。あのジャスティン・ビーバーと同じ町で育ったという彼女が奏でるのはブルースだ。
 
なぜか、彼女のことをアコースティック・ギターをポロポロと爪弾きながら歌うフォーク・シンガーだと勝手に思い込んでいた僕は、彼女が今年5月にリリースしたデビュー・アルバム『Ivory Castanets』を聴き、びっくりしてしまった。
 
しかも、彼女はスライド・ギターの使い手でもあった。
 
14~15歳の時、それまで習っていたピアノに加え、独学でギターを弾き始めた。高校時代には、いくつかのバンドを掛け持ちしながら、自ら曲を作り始めた。『Ivory Castanets』の中でフォークの影響が色濃い、最もシンガー・ソングライター然とした「Like A Wave」「Mama Said」の2曲は、高校時代に書いたものだという。
 
 
 
 
影響を受けたアーティストは、ロバート・ジョンソン、ライトニン・ホプキンス、レッドベリー、エタ・ジェームズとかなり渋い。しかし、彼らをインターネットで見つけたところがなんともイマドキだ。それを考えると、レトロな音楽をやっているように思えて、キャット自身が自分の音楽を懐古調と考えているかどうかは、ちょっとわからない。そこが現代のアメリカーナのおもしろいところだ。
 
大学を卒業した14年頃から友人の協力の下、友人の家の地下室でこつこつと作りためた曲の数々がまとめられ、『Ivory Castanets』として、遂に日の目を見た。
 
そこにはオールドタイミーかつスウィンギーな「Running Water」、弾き語りのフォーク・ブルースにカントリー・タッチの演奏が加わる「The Man I Loved Blues」、ピアノが転がるように鳴るラグタイムの「Walkin’ Down The Road」のような曲も加えられ、彼女の表現が決してブルースだけに限られたものではないことを物語っている。今後はもっともっと型にはまらない表現を追求しながら、僕らを驚かせるに違いない。
 
若干の濁りが入り混じる奔放な歌声も聴き応えがある。
 
海外ではすでに多くのメディアが“カナダの森からやってきた”キャットに注目しはじめている。
 
因みに『Ivory Castanets』というタイトルは、少女時代の愛読書であるジェームズ・オリヴァー・カーウッドの『子熊物語(The Grizzly King)』からの引用で、岩に残された熊の爪(爪痕?)を表現した言葉なんだとか。
 
実は今年のSXSWで滞在最終日の最後にキャットとダイエット・シグ、どちらを見るか迷って、結局、去年、見逃したダイエット・シグを見に行き、ギターを弾きながらぴょんぴょんとステージを飛び回るアレックス・ルチアーノ(Vo, G)のエネルギッシュなパフォーマンスにすっかり魅了されたから、それはそれで別にいいんだけれど、その後、『Ivory Castanets』を聴き、キャットのライヴを見逃したことを、ちょっと、いや、かなり後悔している。
 
もし来年も出演するなら、その時は、ぜひ。
 
 
Ivorycastanets
Ivory Castanets (Cinematic Music Group)

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一度はリタイアも考えた姉妹デュオ、THE SECRET SISTERSが再起を賭け、新作をリリース

Thesecretsisters

 
ニッキー・レーンシャヴェルズ&ロープを擁するニュー・ウェスト・レコードがこの5月と6月、気になるアルバムを立て続けにリリースする。
 
ダニエル・ロマノの『Modern Pressure』(5月19日)を皮切りにジャスティン・タウンズ・アールの『Kids In The Street』(5月26日)、シークレット・シスターズの『You Don’t Own Me Anymore』(6月9日)、サミー・ブルーの『I Am Nice』(6月16日)、そしてデスロンズの『Hurry Home』(6月23日)と、ほぼ毎週、リリースされるラインナップはアメリカーナのファンなら、どれも押さえておきたいものばかりだが、中でも一番、楽しみなのがシークレット・シスターズによる3年ぶりのリリースとなる『You Don’t Own Me Anymore』だ。
 
なぜ、そんなに楽しみなのかと言えば、この3年間、思うように音楽活動ができなかった彼女達が再起を賭け、クラウドファンディングで完成させたアルバムだからだ。
 
ローラとリディア――。アラバマ州マッスル・ショールズ出身のロジャーズ姉妹からなるシークレット・シスターズは、T・ボーン・バーネットの秘蔵っ子としてデビュー。その後、バーネットがプロデュースした2枚のアルバム――カヴァー曲中心でトラディショナルな作風だった10年の『The Secret Sisters』、オルタナ・カントリーに転じた14年の『Put Your Needle Down』ともに歓迎され、ボブ・ディラン、ジャック・ホワイトと共演したことも話題になった。
 
 
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The Secret Sisters (Universal Republic)
 
 
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Put Your Needle Down (Republic)
 
 
そんな彼女達の未来は明るいものに思えた。しかし、彼女達を待っていたのは、自分達がクビにしたマネージャーから逆に訴えられ、レーベルからも契約を打ち切られてしまうというトラブルの連続だった。家賃を払うためにハウスクリーニングのアルバイトもしたという。音楽をやめて、9時5時の仕事に就いたら安定した生活を送ることができるのに、と考えこともあったという。
 
しかし、2人は絶対あきらめないと励ましあいながら、再び曲を書き始めた。
 
そんな2人に協力を申し出たのが、2人が敬愛しているシンガー・ソングライター、ブランディ・カーライルだった。2人が書いた新曲を聴き、彼女は新作をプロデュースすることを快諾。カーライルが『Bear Creek』と『The Firewatcher’s Daughter』という2枚のアルバムをレコーディングしたシアトル郊外にあるお気に入りのスタジオ、ベアー・クリークでレコーディングが実現した。
 
4月27日に公開された『You Don’t Own Me Anymore』からの「He’s Fine」のMVを見たとき、ローラとリディアの力強いハーモニーに胸を打たれた。
 
 
 
それに加え、アルバムのレコーディングの、ちょっとしたドキュメンタリーにもなっている、そのMVからは限られた人数の親密な環境で、ローラとリディアが希望を胸にのびのびと歌っている様子や強靭な意志の下、2人をバックアップするカーライルの確信も伝わってきた。きっと『You Don’t Own Me Anymore』は素晴らしい作品になっている違いない。前の2枚のアルバムがウェルメイドすぎたんじゃないかと思えるぐらい生々しい作品になっていたらおもしろい。
 
誰に対するステートメントなのか考えると興味深い『You Don’t Own Me Anymore』というタイトルからも新作に込めた姉妹の想いの強さが感じられる。
 
 
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You Don't Own Me Anymore (New West)

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思いの外、聴きどころが多いCOCO HAMES(ex.THE ETTES)のソロ・デビュー・アルバム

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今年3月にマージ・レコードからリリースしたココ・ヘイムズのソロ・アルバム。タイトルはシンプルに『Coco Hames』。それが予想していた以上に良かった。正直、彼女が以前、やっていたバンド、THE ETTESのアルバムよりも聴き応えがある。
 
04年にジェム(B)、ポニ(Dr)とともにロサンゼルスでココ(Vo, G)が始めたTHE ETTESは、06年に『Shake the Dust』でシンパシー・フォー・ザ・レコーズからデビュー。その後、活動拠点をナッシュビルに移して、4枚のアルバムに加え、多くのEP、シングルをリリースしてきた。
 
 
Theettes_2THE ETTES
 
 
その『Shake the Dust』はリアム・ワトソン(ホワイト・ストライプス他)によるロンドン・レコーディングだったが、THE ETTESはワトソンのみならず、ブラック・キーズのダン・オーバックやオブリヴィアンズ/レイニング・サウンドのグレッグ・カートライトともレコーディングを経験していることから、いわゆるガレージ・ロック・リヴァウイヴァル・シーンの先輩達に、ずいぶんとかわいがられたバンドだったという印象がある。
 
そう言えば、ココはグレッグ・カートライトとパーティング・ギフツというユニットを組んで、10年にシンパシー・フォー・ザ・レコード・インダストリーと並ぶガレージ・リヴァイヴァルの名門レーベル、イン・ザ・レッドから『Strychnine Dandelion』というアルバムもリリースしたことがある。
 
 
Partinggifts THE PARTING GIFTS
 
 
『Coco Hames』はTHE ETTESの活動休止後、ココが初めてリリースする作品だ。アラバマ・シェイクス、ハレイ・フォー・ザ・リフ・ラフ、ベンジャミン・ブッカー他を手掛けたアンドリジャ・トキックのプロデュースの下、ナッシュビルでレコーディングした全10曲が収録されている。
 
THE ETTESでやっていたガレージ・ロック路線を受け継ぎつつ、彼女が聴きながら育ったというクラシック・カントリーや60年代のガール・ポップの影響も滲ませながら、表現の幅を広げているんだから、聴き応えがあるのは当然と言えば、当然だろう。
 
 
 
 
もちろん、アルバムの一番の聴きどころは、ガレージ・ロックに止まらないバックグラウンドが反映された曲の数々には違いない。しかし、その曲の数々を演奏しているミュージシャン達によるツボを押さえた手堅い演奏もまた、聴きどころだ。
 
ギターのみならず、自らハープシコードやオムニコードも演奏したココをバックアップするミュージシャン達の顔ぶれは以下の通り――。
 
グリーンホーンズ/ラカンターズのベーシスト、ジャック・ローレンス。ロズウェル・キッド他のギタリストで、ナッシュビルで今最もホットなギタリストと注目されているアダム・マスターハンス。ホイッグス/イーグル・オブ・デス・メタルのドラマー、ジュリアン・ドリオ。レイニング・サウンドや数々のセッションで活躍しているオルガン奏者、デイヴ・アメルズ。ジャック・ホワイトのプロデュースによるソロ・アルバムをリリースしたシンガー・ソングライター、リリー・メイ・リーシュ。そしてディア・ティックのフロントマン、ジョン・マッコーリーら、まさにナッシュビルのインディー・シーンの精鋭と言えるミュージシャン達がレコーディングに参加している。
 
中でも、「Tiny Pieces」というトミー・スティンソンのバッシュ&ポップ時代の曲を、ココとデュエットして、強烈な印象を残したジョン・マッコーリーのガッツあふれるシャウトは、アルバムの大きな聴きどころだ。ココの歌声がやや甘すぎるきらいがあることを考えると、ジョンの歌声がある意味、濁りを加えたこの1曲があるのとないのとでは、アルバムの印象はずいぶん違っていたと思う。
 
 
 
 
THE ETTESがナッシュビルでやっているフォンド・オブジェクトというレコードおよびアンティーク・ショップで開催したインストア・ライヴならぬバックヤード・ライヴにトミー・スティンソンを招いた時から、ココは「Tiny Pieces」をいい曲だと思っていたという。ジョンはリプレイスメンツの大ファンだ。「Tiny Pieces」を提案され、即OKしたんじゃないか。
 
久しぶりにジョンの歌声を聴き、ぐっと来た。そんなチャンスを作ってくれたココに感謝したい。
 
 
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Coco Hames (Merge)

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SXSW 2017 3月18日(土)  テキサスのカルト・バンド、LIFT TO EXPERIENCEの再結成を目撃!

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Waterloo Records
 
 
 
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MATTHEW LOGAN VASQUEZ [Waterloo Records presents] @ Waterloo Records
 
 
 
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COLONY HOUSE [Waterloo Records presents] @ Waterloo Records
 
 
 
Whole_foods
 
 
 
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HIPPO CAMPUS [Waterloo Records presents] @ Waterloo Records
 
 
 
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THE WEEKS [Party in my Pants Day Showcase presented by Live Vibe and Firmspace] @ Little Woodrow's
 
 
 
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CHAMPAGNE SUPERCHILLIN [Siren Sounds + Har Mar Superstar's Best Party Ever] @ Cheer Up Charlie's
 
 
 
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THE MOLOCHS [Siren Sounds + Har Mar Superstar's Best Party Ever] @ Cheer Up Charlie's
 
 
 
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GABRIELLA COHEN [Siren Sounds + Har Mar Superstar's Best Party Ever] @ Cheer Up Charlie's
 
 
 
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LIFT TO EXPERIENCE @ Central Presbyterian Church
 
 
 
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DIET CIG [NME Magazine] @ Barracuda
 
 

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