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2018年6月

サイドマンとして活躍してきたJOHN CALVIN ABNEYの真の実力

Jca

 
 
リリースは16年だったから、「Best 10 albums 2017」には入れなかったけど、17年に一番聴いたアルバムは、オクラホマ州タルサ出身のシンガー・ソングライター、ジョン・カルヴィン・アブニーの『Far Cries and Close Calls』だったと思う。
 
 
Farcries Far Cries and Close Calls(Horton)
 
なぜ、そんなはまったのか。たぶん、それは彼が甘酸っぱいセンチメントとともに表現する寂寥感が琴線に触れたからだと思うのだが、そういう感情を決して垂れ流さずに展開のはっきりした楽曲に収める、ある意味、ウェルメイドなソングライティングもまた、聴きながら心地良かった。
 
明らかにフォーク、カントリー、ブルースの影響を根っこに持ちながら、決して土臭くならないインディ・ロック・マナーのサウンドは、エリオット・スミスやコナー・オバーストをひきあいにルーツ・ポップという言葉とともに複数のプレスから歓迎された。しかし、60年代のビート・バンドを彷彿とさせる「Jailbreak」やエネルギッシュなロックンロールの「Weekly Rate Palace」のような曲も収録した『Far Cries and Close Calls』には、ルーツ・ポップの一言だけでは表現しきれない魅力があった。
 
 
 
 
 
彼の存在に興味を持ったきっかけは、前述した「Best 10 albums 2017」に選んだジョン・モアランドの『Big Bad Luv』とポーター&ザ・ブルーボネット・ラトルスネークスの『Don't Go Baby It's Gonna Get Weird Without You』という2枚のアルバムにマルチ・プレイヤーとして参加していたことだった。
 
売れっ子プレイヤーとして、あちこちに顔を出しているならいざ知らず、かなりマニアックなベスト10に選ぶくらい大好きな2枚のアルバムに参加しているなんてと感じるものがあったので、ジョンのことを調べてみたら、ジョン・モアランドをはじめ、複数のミュージシャンのレコーディングやツアーに参加するかたわら、ソロ・アーティストとしても活動していることがわかって、慌てて、その時一番新しかった『Far Cries and Close Calls』を手に入れたところ、前述のとおりすっかりはまってしまったというわけだ。
 
今年3月にはSXSWでライヴを見ることもできた。バンドを従え、ステージに立ったジョンを見ながら、ライヴ・パフォーマーとしても華のあるアーティストであることを実感。そして、日本でももっと多くの人に彼のことを知ってほしいと思った。
 
 
S_john_calvin_abney_4_2 SXSW 2108
 
 
同郷の盟友、ジョン・モアランドがさらなる注目を集め始めたことで、17年はジョンにとっても忙しい1年になった。
 
ギタリスト/キーボーディストとして参加したモアランドのツアーは125公演を超え、ジョン・プラインやアイアン&ワインと同じステージに立つ機会をジョンに与えたが、能ある鷹は自分の爪を磨くことも決して忘れなかった。
 
モアランドと全米各地を回る一方で、ジョンはソロ・アーティストとしても精力的にステージに立ちながら、新曲を作ることにも精を出してきた。
 
その成果と言えるのが3枚目のアルバム『Coyote』だ。サンフランシスコとタルサを拠点としている新興レーベル、ブラック・メサ・レコードから5月18日にリリースされた。
 
 
Coyote_2 Coyote(Black Mesa)
 
 
『Far Cries and Close Calls』と同じアーカンソー州リトル・ロックにあるスタジオ、フェローシップ・ホールでレコーディングしながら、生々しいバンドの演奏を、その騒々しさとともにとらえた前作から一転、『Coyote』は音数を削ぎ落とした演奏を、一音一音、ていねいに録っていったことを想像させるアコースティック調の作品になっている。
 
レコーディングに参加したミュージシャンは、前作からひきつづきパディ・ライアン(ドラムス)とミーガン・パーマー(ヴァイオリン、バッキング・ヴォーカル)、そして今回、初参加となる元ドライヴ・バイ・トラッカーズのショーナ・タッカー(ベース、バッキング・ヴォーカル)の計3人。ジョンはアコースティック・ギターとキーボードの他、ハーモニカ、ヴィブラフォン、ペダル・スティール、ドラム・マシーンなどを自ら演奏している。
 
ヴァイオリンとピアノだけのインスト小品の「Leslie Lane」を含む計10曲を収録。
 
「Cowboys and Canyon Queens」と「South Yale Special」の2曲は、アコースティック・ギターの弾き語りによるトラッドなフォーク・ナンバーだが、その他の曲では音数を削ぎ落としながらトラディショナルなだけに止まらないアイディアの閃きが、ジョンの歌声とともに聴きどころになっている。
 
中でもフォーク・ナンバーにブギウギ・ピアノを加えた「Broken Bow」、打ち込みの淡々としたリズムがたそがれた風情を醸しだすフォーキーなブルース・ナンバーの「Get Your House In Order」、メランコリーが胸に染みる音響系カントリー・ナンバーの「Sundowner」の3曲は、ルーツ・ポップと謳われるジョンの真骨頂と言ってもいい。もちろん、前述したウェルメイドなソングライティングの魅力は、今回も変わらない。
 
 
 
 
“Dreamy folk with a good balance of sadness and sunshine”と評したローリング・ストーンをはじめ、すでに『Coyote』は数々のメディアからベック、エリオット・スミス、ライアン・アダムス、さらにはイギリスのロマン派の詩人であるワーズワースやバイロンをひきあいに取り上げられ、ジョンは『Far Cries and Close Calls』をリリースした時以上に注目を集め始めている。
 
それをきっかけにサイドマンとして活躍してきたジョンの真の実力が多くの人に認められることを願ってやまない。
 
因みに『Coyote』という今回のタイトルは、ジョン・モアランドがステージでジョンを紹介する時に言った“コヨーテ・トリガー”というニックネームに由来しているそうだ。
 
 
 
 
 
 
 

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