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THE FELICE BROTHERSにまつわるジレンマ

Felicebrothers_3                                         THE FELICE BROTHERS w/ Conor Oberst & Jim Keltner

 
 
アメリカーナなロックンロール・バンド、フェリース・ブラザーズのフロントマン、イアン・フェリースが8月にリリースしたソロ・アルバム『In the Kingdom of Dreams』に対する僕の興味は初め、09年にバンドを離れたドラマー、サイモン・フェリースによるプロデュースであることと、そのサイモンがドラムもプレイしたことで、グレッグ・ファーリー(フィドル)抜きとは言え、フェリース・ブラザーズのオリジナル・ラインナップのリユニオンが実現したことに向いていた。
 
 
 
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In the Kingdom of Dreams / Ian Felice (Loose)
 
 
 
サイモンが抜けてからバンドにふさわしいドラマーに出会えずにいるフェリース・ブラザーズに若干の物足りなさを感じていた僕は、イアンのソロではあるけれど、ひょっとしたらサイモンがいた頃のフェリース・ブラザーズが蘇るようなアルバムになっているんじゃないかと期待していたわけだ。常日頃、バンドに所属しているミュージシャンがソロ活動することに不寛容な態度を取っているくせに虫が良すぎると自分でも思いながら――。
 
しかし、『In the Kingdom of Dreams』は実にソロ・アルバムらしいソロ・アルバムだった。
 
アコースティック・ギター、バンジョー、あるいはピアノの弾き語りに若干の演奏を加えた曲の数々が持つ内省的な空気と音数をとことん絞った演奏が生む緊張感は明らかにバンドのサウンドとは違うものだ。これならソロ・アルバムをリリースする意味もある。最初は、ほっとしたような、ちょっと残念だったような複雑な気持ちになったが、ためのきいたサイモンのドラムを久しぶりに聴けたのもうれしかった。
 
バンドのアルバムと比べて、勝るとも劣らない聴きごたえが楽しめる、いや、イアンの歌の魅力が際立っているという意味では、バンドのアルバムよりも味わい深い、か。
 
ラストの「In the Final Reckoning」はエレピで弾き語るメランコリックなバラードだが、イアンの作詞・作曲にもかかわらず、どこかサイモンのソロを髣髴させるところがおもしろい。
 
ところで、サイモンを含むフェリース・ブラザーズのオリジナル・ラインナップのリユニオンは、実は10年と11月の6月にニューヨーク・シティーの北に位置するハドソン川沿いの小さな町、クロトン・オン・ハドソンで開催されたフェスティバル、Clearwater's GREAT Hudson River Revivalにフェリース・ブラザーズが出演したとき、サイモンが彼らのステージに飛び入りする形で実現している。
 
 
 
 
 
また、15年4月には、サイモンが同月の23日~26日の4日間、ニューヨーク州ウッドストックにあるアップルヘッド・スタジオで行ったライヴでイアン(ギター)、ジェームズ・フェリース(オルガン、ピアノ、アコーディオン)、クリスマスことジョシュ・ロウソン(ベース)、そしてグレッグ・ファーリーら、フェリース・ブラザーズのメンバーが演奏を務め、ファンを喜ばせた。この時、サイモンはソロ名義で発表した曲の数々に加え、フェリース・ブラザーズ時代にリード・ヴォーカルを務めていた「Don’t Wake The Scarecrow」「Radio Song」も歌ったのだった。
 
その時の模様は、15年10月(?)に2枚組のライヴ・アルバム『From the Violent Banks of the Kaaterskill』としてリリースされた。
 
 
 
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From the Violent Banks of the Kaaterskill / Simone Felice (Mighty Hudson)
 
 
 
それがすごい。
 
サイモンのソングライティングとヴォーカリストとしての力量を存分にアピールだけに止まらず、メランコリックなメロディーを歌い上げるサイモンの凄味のある歌に応えるようにフェリース・ブラザーズのメンバー達も気迫に満ちたソリッドな演奏を繰り広げている。
 
それを聴きながら、今のフェリース・ブラザーズには、その気迫や前述した緊張感がちょっと足りないんじゃないか、と思ったり、慌てて、いやいやいや、むしろたとえ主人公が野垂れ死んでしまう曲を歌っても決してペシミスティックにならないところこそが、フェリース・ブラザーズの本当の魅力なんじゃないか。コナー・オバーストが『Salutations』でバック・バンドに起用したフェリース・ブラザーズに求めたものも、きっとそれだったはず、と思ったり――。
 
ともあれ、タイトルとは裏腹にギャング風(と言うか、西部開拓時代のならず者風と言うか)の賑やかさを、これまで以上に打ち出した16年発表の『Life in the Dark』は、そんなフェリース・ブラザーズのベストと言ってもいいかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
Saltations
Salutations / Conor Oberst (Nonesuch)
 
 
Lifeinthedark
Life in the Dark / THE FELICE BROTHERS (Yep Roc)
 
 
 
しかし、その一方では、すでに書いたように……。
 
フェリース・ブラザーズのオリジナル・ラインナップのリユニオンが実現するたび、僕はそんなジレンマに悩まされるのだった。

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