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2017年12月

2018年はこれを聴く! DAN AUERBACHと彼のレーベル、EASY EYE SOUNDの新展開に注目!

Danauerbach

 
 
ミュージシャンとして活躍するかたわら、いつ休んでいるの?!と不思議になるくらいプロデューサー業、スタジオ経営にも精を出すダン・オーバックがそれだけでは飽き足らないと言わんばかりに今度は、所属レーベルであるノンサッチで自分のレーベルを始めてしまった。
 
レーベル名は、ナッシュビルにある彼のスタジオの名前と同じEasy Eye Sound。ここを拠点に自分がかっこいいと思う音楽を送り出していこうと考えているのだろう。
 
レーベルとしてのEasy Eye Soundのリリース第1弾は、今年6月にリリースした自身のソロ・アルバム『Waiting On A Song』(EES-001)。
 
 
 
Danauerbach_2 Waiting On A Song / Dan Auerbach
 
 
 
 
 
それから6か月、12月8日には昨年、63歳でミシシッピのレーベル、Big Legal Messから『Age Don't Mean A Thing』でデビューしたブルース/R&Bのシンガー・ソングライター/ギタリスト、ロバート・フィンリーによる2作目のアルバム『Goin' Platinum!』(EES-002)を、ダン自らのプロデュースでリリースした。
 
 
Robert_finley_goin_platinum_ees_0 Goin' Platinum! / Robert Finley
 
 
これが素晴らしい作品だった。
 
ダンはロバートの歌をもっと多くの人に聴いてほしいと考えたのだろう。Big Legal Messのヘッドであるブルース・ワトソンとジンボ・マサスがプロデュースした前作のサザン・ソウル路線を受け継いだうえで、新たに女性コーラスを巧みに使ったキャッチーなアレジを加え、彼の歌をより多くのリスナーにアピールできるものにしたのは、まちがいなくダンの手腕だ。
 
 
 
 
正直、ダンのプロデュースワークは、ハマる時とハマらない時があると思うのだが、『Goin' Platinum!』は見事にハマった。ダンのソロ同様にポジティヴなヴァイブに満ち溢れているようなところもいい。
 
Easy Eye Soundの今後のリリースががぜん楽しみになってきた。
 
すでにEasy Eye Soundのウェブサイトでは、シャノン&ザ・クラムスの『Onion』、ソニー・スミスの『Rod For Your Love』という2月、3月のリリースが発表されている(その後、4月にはリンク・レイの未発表曲「Son of Rumble (/Whole Lotta Talking)」を7インチ・シングルとしてリリースする)。
 
 
 
Shannonandtheclamsonion1200_2 Onion / Shannon & The Clams
 
 
Sonny_smith_rod_for_your_love_0c260 Rod For Your Love / Sonny Smith
 
 
シャノン&ザ・クラムスは、オールディーズな魅力もあるオークランドのガレージ・パンク4人組。『Onion』はすでに8年ほどの活動歴を持つ彼らの5作目のアルバムとなる。
 
 
 
 
ソニー・スミスは、サンフランシスコのシンガー・ソングライター。その活動は90年代の半ばまで遡ることができるらしい。07年にはサンフランシスコのインディー・シーンのミュージシャン達とローファイ・ガレージ・バンド、ソニー&ザ・サンセッツを組んで、多くの作品をリリースしてきた。
 
 
 
 
『Onion』『Rod For Your Love』ともにダンによるプロデュース。
 
ベイエリアのインディー~ガレージ・シーンに急接近した新たなコネクションが興味深い。
 
それが今後、どんな活動につながるのか、ジャック・ホワイトのサード・マンに負けないものになるのかという興味も含め、ダンとEasy Eye Soundの動きに注目していきたい。
 
ダンは2月10日のヴァンクーバー公演を皮切りに「Dan Auerbach & the Easy Eye Sound Revue」と銘打ち、ロバート・フィンリー、シャノン&ザ・クラムスらと4月5日のデンヴァー公演まで北米各地をツアーする予定だ。
 
 

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やっと出会えたと思ったら、もうこの世にいなかったなんて、あまりにも寂しすぎるじゃないか。PORTER & THE BLUEBONNET RATTLESNAKESが遺した渾身の1枚

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2016年10月19日、ノース・カロライナ州スミスフィールドにほど近い州間高速道路で3人のミュージシャンを乗せたヴァンが後ろから猛スピードで走ってきた大型トラックに追突されるという大事故が起きた。
 
3人のミュージシャンの内、クリス・ポーター(Vo, G)とミッチェル・ヴァンダーバーグ(B)は絶命。もう一人のアダム・ナーリー(Dr)も一命は取り留めたものの、重傷を負った。
 
前夜、サウス・カロライナ州チャールストンで演奏した3人は、次の公演地であるメリーランド州ボルチモアに向かうところだったという。
 
それから約1年が過ぎた2017年11月、アラバマのインディ・レーベル、コーネリアス・チャペルがリリースしたポーター&ザ・ブルーボネット・ラトルスネークスの『Don’t Go Baby It’s Gonna Get Weird Without You』というアルバムがアメリカン・ロックのファンの間で話題になった。
 
 
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Don't Go Baby It's Gonna Get Weird Without You (Cornelius Chapel)
 
 
その『Don’t Go Baby It’s Gonna Get Weird Without You』はスミスフィールドの追突事故で亡くなったクリス・ポーターが事故に遭う8か月前、腕っこきのミュージシャン達と作り上げた渾身の1枚だったのだ――。
 
80年にアラバマ州ペル・シティーで生まれたクリス・ポーターは、チャンスを掴もうとやってきたアラバマ州最大の都市、バーミングハムで本格的に音楽活動を始めたという。それが02年。それからクリス・ポーター&ザ・ストールン・ローゼズを皮切りにバック・ロウ・バプティスツ、サム・ダーク・ホラーというバンドも結成。バック・ロウ・バプティスツ、サム・ダーク・ホラーでは、それぞれに『Broken Hearts & Bad Decisions』(10年)、『Hollow Chest』(12年)というアルバムもリリースしている。
 
その後、ソロに転じて、13年にはジョン・ポール・ホワイトのレーベル、シングル・ロックに所属しているバンド、ザ・ポリーズとポーター&ザ・ポリーズ名義でデジタル・オンリーのEPをリリース。
 
 
 
 
 
 
そして、14年に新天地を求め、バーミングハムから移り住んだテキサス州オースティンでセントロ・マティックの元メンバー、ウィル・ジョンソンの協力の下、ソロ名義のアルバム『This Red Mountain』をレコーディング。それを15年にリリースしたところ、ポーターの存在はにわかに注目され始め、その追い風を感じながらポーターが再びウィルと組んで作ったのが、『Don’t Go Baby It’s Gonna Get Weird Without You』だったのだ。
 
『This Red Mountain』の反響に手応えを感じたのだろう。『Don’t Go Baby It’s Gonna Get Weird Without You』を作るにあたって、ポーターとウィルはレコーディングのメンバーを一新。“アメリカの実生活のダークで絶望した物語”を歌うポーターの評判を全国区のものにするのにふさわしいミュージシャンを、オースティンのランブル・クリーク・スタジオに招いた。 
 
その顔ぶれは――。 
 
人気急上昇中のシンガー・ソングライター、ジョン・モアランドのサイドマンとしても注目されているシンガー・ソングライター兼マルチプレイヤー、ジョン・カルヴィン・アブニー(ギター、キーボード、アコーディオン、ペダル・スティール他)。新世代サザン・ロックの旗手、ドライヴ・バイ・トラッカーズの元メンバー、ショナ・タッカー(ベース、ハーモニー・ヴォーカル)。ドラムはプロデューサーを務めたウィルが自ら演奏した。
 
アメリカン・ロックを熱心に聴いているリスナーなら、思わず「おおっ」と身を乗り出すにちがいないミュージシャン達が奏でるのは、カントリーやブルース~ブギの影響を滲ませながら、たっぷりと歪みも含んだルーツィーなロック・サウンドだ。
 
00年代前半だったらオルタナ・カントリーと言われていただろう。中にはシンセサイザーも使って、アンビエントなサウンドを意識した曲もある。
 
ザクザク・ギュインギュインと鳴るバンドの演奏、そして、たそがれた味わいとならず者っぽい荒々しさが絶妙に入り混じるポーターの嗄れ声から筆者が連想したのは、ルセロ、ドライヴ・バイ・トラッカーズ、リッチモンド・フォンテーン、ライアン・アダムスら、オルタナ・カントリー・ブームとともに注目されたバンドばかりだった。アルバムを締めくくる「East December」からはリプレイスメンツも思い出した。
 
 
 
 
 
もちろん、新しい音楽とは言えない。むしろ、懐かしいと言ったほうがふさわしいかもしれない。しかし、こういう音楽を求めているリスナーは決して少なくない。
 
作品のクオリティーを考えても、『Don’t Go Baby It’s Gonna Get Weird Without You』はポーターにとって大きな転機になるはずだった。実際、前作以上に評判になっている。
 
享年36歳というあまりにも早すぎる死が惜しまれる。ポーター自身も悔しかったことだろう。
 
やっと出会えたと思ったら、もうこの世にいなかったなんて、あまりにも寂しすぎるじゃないか。
 
しかし、作品は残る。その魅力を伝えることでポーターのことを一人でも多くの人が知ってくれたら、彼の無念も少しは晴れるんじゃないか。そんなことを願って、『Don’t Go Baby It’s Gonna Get Weird Without You』を大音量で聴いている。
 
 
 

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THE FELICE BROTHERSにまつわるジレンマ

Felicebrothers_3                                         THE FELICE BROTHERS w/ Conor Oberst & Jim Keltner

 
 
アメリカーナなロックンロール・バンド、フェリース・ブラザーズのフロントマン、イアン・フェリースが8月にリリースしたソロ・アルバム『In the Kingdom of Dreams』に対する僕の興味は初め、09年にバンドを離れたドラマー、サイモン・フェリースによるプロデュースであることと、そのサイモンがドラムもプレイしたことで、グレッグ・ファーリー(フィドル)抜きとは言え、フェリース・ブラザーズのオリジナル・ラインナップのリユニオンが実現したことに向いていた。
 
 
 
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In the Kingdom of Dreams / Ian Felice (Loose)
 
 
 
サイモンが抜けてからバンドにふさわしいドラマーに出会えずにいるフェリース・ブラザーズに若干の物足りなさを感じていた僕は、イアンのソロではあるけれど、ひょっとしたらサイモンがいた頃のフェリース・ブラザーズが蘇るようなアルバムになっているんじゃないかと期待していたわけだ。常日頃、バンドに所属しているミュージシャンがソロ活動することに不寛容な態度を取っているくせに虫が良すぎると自分でも思いながら――。
 
しかし、『In the Kingdom of Dreams』は実にソロ・アルバムらしいソロ・アルバムだった。
 
アコースティック・ギター、バンジョー、あるいはピアノの弾き語りに若干の演奏を加えた曲の数々が持つ内省的な空気と音数をとことん絞った演奏が生む緊張感は明らかにバンドのサウンドとは違うものだ。これならソロ・アルバムをリリースする意味もある。最初は、ほっとしたような、ちょっと残念だったような複雑な気持ちになったが、ためのきいたサイモンのドラムを久しぶりに聴けたのもうれしかった。
 
バンドのアルバムと比べて、勝るとも劣らない聴きごたえが楽しめる、いや、イアンの歌の魅力が際立っているという意味では、バンドのアルバムよりも味わい深い、か。
 
ラストの「In the Final Reckoning」はエレピで弾き語るメランコリックなバラードだが、イアンの作詞・作曲にもかかわらず、どこかサイモンのソロを髣髴させるところがおもしろい。
 
ところで、サイモンを含むフェリース・ブラザーズのオリジナル・ラインナップのリユニオンは、実は10年と11月の6月にニューヨーク・シティーの北に位置するハドソン川沿いの小さな町、クロトン・オン・ハドソンで開催されたフェスティバル、Clearwater's GREAT Hudson River Revivalにフェリース・ブラザーズが出演したとき、サイモンが彼らのステージに飛び入りする形で実現している。
 
 
 
 
 
また、15年4月には、サイモンが同月の23日~26日の4日間、ニューヨーク州ウッドストックにあるアップルヘッド・スタジオで行ったライヴでイアン(ギター)、ジェームズ・フェリース(オルガン、ピアノ、アコーディオン)、クリスマスことジョシュ・ロウソン(ベース)、そしてグレッグ・ファーリーら、フェリース・ブラザーズのメンバーが演奏を務め、ファンを喜ばせた。この時、サイモンはソロ名義で発表した曲の数々に加え、フェリース・ブラザーズ時代にリード・ヴォーカルを務めていた「Don’t Wake The Scarecrow」「Radio Song」も歌ったのだった。
 
その時の模様は、15年10月(?)に2枚組のライヴ・アルバム『From the Violent Banks of the Kaaterskill』としてリリースされた。
 
 
 
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From the Violent Banks of the Kaaterskill / Simone Felice (Mighty Hudson)
 
 
 
それがすごい。
 
サイモンのソングライティングとヴォーカリストとしての力量を存分にアピールだけに止まらず、メランコリックなメロディーを歌い上げるサイモンの凄味のある歌に応えるようにフェリース・ブラザーズのメンバー達も気迫に満ちたソリッドな演奏を繰り広げている。
 
それを聴きながら、今のフェリース・ブラザーズには、その気迫や前述した緊張感がちょっと足りないんじゃないか、と思ったり、慌てて、いやいやいや、むしろたとえ主人公が野垂れ死んでしまう曲を歌っても決してペシミスティックにならないところこそが、フェリース・ブラザーズの本当の魅力なんじゃないか。コナー・オバーストが『Salutations』でバック・バンドに起用したフェリース・ブラザーズに求めたものも、きっとそれだったはず、と思ったり――。
 
ともあれ、タイトルとは裏腹にギャング風(と言うか、西部開拓時代のならず者風と言うか)の賑やかさを、これまで以上に打ち出した16年発表の『Life in the Dark』は、そんなフェリース・ブラザーズのベストと言ってもいいかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
Saltations
Salutations / Conor Oberst (Nonesuch)
 
 
Lifeinthedark
Life in the Dark / THE FELICE BROTHERS (Yep Roc)
 
 
 
しかし、その一方では、すでに書いたように……。
 
フェリース・ブラザーズのオリジナル・ラインナップのリユニオンが実現するたび、僕はそんなジレンマに悩まされるのだった。

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