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2017年8月

JOHN PAUL WHITEとBEN TANNERがアラバマに作った音楽の理想郷

Bentanner

(左からジョン・ポール・ホワイト、ウィル・トラップ、ベン・タナー)

 
タイトルで謳った理想郷は、ちょっとオーバーだったかもしれない。しかし、流行とは関係なく、あるタイプの音楽を愛する人達が夢を膨らませることができる場所が、アラバマ州フローレンスにはある。
 
それがジョン・ポール・ホワイトとベン・タナーがやっているシングル・ロック・レコード(Single Lock Records)だ。
 
ジョン・ポール・ホワイトはジョイ・ウィリアムズと組んでいたデュオ、シビル・ウォーズで、12年にグラミーのベスト・フォーク・アルバムとベスト・カントリー・デュオ/グループ・パフォーマンスを受賞した経験もあるシンガー・ソングライター。シビル・ウォーズ解散後は、ソロ・アーティストとして活躍しているが、アメリカでは俳優のジョニー・デップに似ていると評判になっているようだ。一方のベン・タナーは、15年4月にリリースした2ndアルバム『Sound & Color』が全米No.1ヒットになったアラバマ・シェイクスのキーボード奏者だ。
 
シングル・ロック・レコードと名乗っているように現在はレーベル業が中心だが、そもそものスタートは、リーズナブルな値段で使えるレコーディング・スタジオだった。やがて、地元・アラバマのバンドが世に出る手助けもしたいと考えたふたりは13年、友人のビジネスマン、ウィル・トラップの協力の下、レーベル業にも乗り出した。そして、アラバマ州バーミングハムの6人組ソウル・バンド、セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズの『Half The City』(14年)のヒットを経て、現在は地元以外のアーティストの作品もリリースしながら、フローレンスのダウンタウンで116 E. Mobileというライヴハウスも運営。地元のライヴ・ミュージック・シーンを盛り上げることにも尽力している。
 
もちろん、レコーディング・スタジオもシングル・ロックから名前を、サン・ドロップ・サウンドと改め、現在も続けている(もしかしたら、シングル・ロックとは別にサン・ドロップ・サウンドを新たに作ったのかもしれない)。
 
便宜上、シングル・ロック・レコードと名乗ってはいるものの、いわゆるレコード会社ではなく、DIYを基本としたミュージック・コレクティヴ(共同体)と考えたほうがよさそうだ。
筆者がシングル・ロック・レコードに辿りついたきっかけは、ユタ州オグデンからやってきた15歳のシンガー・ソングライター、サミー・ブリューが今年6月、ニュー・ウェスト・レコードからリリースしたデビュー・アルバム『I Am Nice』だった。
 
 
 
 
ホワイトとタナーによるプロデュースの下、サン・ドロップ・サウンドとナットハウスででレコーディングされた『I Am Nice』を聴きながら、レコーディングに参加したミュージシャンが聞き慣れない名前ばかりだったので、どういう人達なんだろうと調べてみたら、シングル・ロックのレーベル付き(と言ってもいい)ミュージシャン達とシングル・ロックからシングルとEPをリリースしているフローレンスのロックンロール・バンド、ダニエル・エリアス+エキゾチック・デンジャーズのメンバーだったことがわかった。
 
ニュー・ウェスト・レコードから渡されたプロデューサー・リストの中から、サミーはホワイトとタナーを選んだそうだが、その決め手になったのは、フローレンスを含むマッスル・ショールズが50年代から受け継いできた豊かな音楽の歴史と伝統だったらしい。
 
フローレンスを訪れたサミーは、ホワイトにFAMEスタジオの見学ツアーに招かれ、そこで彼らにプロデュースを頼むことを決めたという。彼らと組めば、自分もマッスル・ショールズの歴史と伝統の一部になれるかもしれないと思ったようだ。
 
マッスル・ショールズの音楽の歴史に新しいページを加えながら、シングル・ロックの
活動は、ジェイソン・イズベルアラバマ・シェイクスリー・ベインズ3世&ザ・グローリー・ファイヤーズの活躍によって、再び活気づきはじめたアラバマ・シーンを支えるものとして、これから注目を集めるに違いない。が、もちろん、その活動はアラバマだけに止まるものではない。
 
すでに書いたようにシングル・ロックは、ルイジアナ州シュリーヴポート出身のシンガー・ソングライター、ディラン・ルブラン、ナッシュビルのカントリー・シンガー、ザ・カーナルことジョー・ガーナーといったアラバマ以外のアーティストの作品もリリースしている。
 
 
 
Stpaul St.Paul & The Broken Bones
 
 
 
Danielelias Danile Elias + Exotic Dangers
 
 
 
Dylanleblanc Dylan LeBlanc
 
 
 
Thekernal The Kernal
 
 
 
そして、この7月にはニュー・ジャージー出身で、現在はナッシュビルを拠点にしているシンガー・ソングライター、ニコール・アトキンスレオン・ブリッジスを手掛けたナイルズ・シティー・サウンドとテキサス州フォート・ワースで作ったソウルなカントリーの新作『Goodnight Rhonda Lee』をリリースした。
 
 
Nicoleatkins Nicole Atkins
 
 
06年にソロ・デビューして、メジャーからの作品も含め、3枚のアルバムをリリースしてきた彼女を迎え入れたことは、サミー・ブリューのアルバムとともにシングル・ロックがさらに多くの人に知られる、いいきっかけになるだろう。
 
 
 
 
 
Frankly, that’s what we want to release—our favorite music.――をモットーに掲げるシングル・ロックが、これからどんなアーティストの作品をリリースしていくのか楽しみだ。きっと現在進行形のアメリカーナ・シーンに興味を持っているリスナーの好奇心を刺激する作品をリリースしてくれるはずだ。大いに期待している。
 
 
 
 
Nicoleatkinsjkt
Goodbye Rhonda Lee / Nicole Atkins (Single Lock)
 
 

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