« 2017年6月 | トップページ | 2017年8月 »

2017年7月

JUSTIN TOWNES EARLEがトヨタ・カローラを歌った理由

Jte2

 
 
ジャスティン・タウンズ・アールの最新アルバム『Kids In The Street』は、「Champagne Corolla」という日本人には親しみが湧くタイトルがつけられたロックンロール・ナンバーで始まる。
 
 
 
 
その「Champagne Corolla」を聴きながら、なぜジャスティンは日本を代表する大衆車であるトヨタ・カローラを小道具に使い、無為の日々を過ごしている若者が恋に焦がれる気持ちを歌ったんだろうと不思議に思っていたら、ジャスティンはその理由を、noisey.vice.comにこんなふうに語っていた。
 
「最近の車は55年型のシボレーと違ってクールじゃないから曲の題材にならないとこぼしているソングライターがいたんだ」
 
だから、俺がそのクールじゃない最近の車で曲を作ってやったんだ、と。
 
「俺は下流中産階級で育ったんだ。周りにいる連中もそいつらの母親もみんなカローラに乗っていたよ」
 
母親と限定したのは自分も含め、母子家庭が多かったからなのかどうなのか。ともあれ、カローラを題材にしたことで、カローラがどういう車なのか知っている人なら、街で見かけたイカした女の子を探し求める主人公の境遇やそこに滲むその境遇を脱け出せない悲哀が具体的な描写がなくてもなんとなく理解できるというわけだ。そこに最近の車を題材にする意味がある。
 
「マイク・モギスはここでメロトロンを試してみようぜという感覚を(『Kids In The Street』のレコーディングに持ち込んでくれた。俺だったらたぶんフィドルか何か、そういうトラディショナルな楽器を試していたに違いない局面でね」
 
この発言からもジャスティンが『Kids In The Street』でどんなサウンドにアプローチしようと考えていたかが窺えるが、noisey.vice.comの記事を書いたAnnalise Domenighiniは『Kids In The Street』にはサウンドのみならず、歌詞の面でもフォーク・ミュージックを現代的なものにしようというテーマがあったと指摘している。
 
その最たるものが前述した「Champagne Corolla」とジャスティンが弾き語りしたフォーク・ブルース調の「Same Old Stagolee」。
 
 
 
 
 
後者のモチーフであるスタッグ・リー・シェルトンによる1895年のビリー・ライアンズ射殺事件は、いわゆるマーダー・ソングとして、数多くのアーティストがそれぞれに手を加え、場合によってはタイトルも変えながら歌い継いできた。
 
中でも一番有名なのはロイド・プライスによって、1959年に全米No.1ヒットになった「Stagger Lee」かもしれない。個人的にはニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズによる『Murder Ballads』(1996年)の「Stagger Lee」やブラック・キーズによる『Rubber Factory』(2004年)の「Stack Shot Billy」も馴染み深い。
 
ジャスティンが今回、タイトルに加えた“Same Old”=相も変わらずのという言葉からは、手垢がついているとも言えるマーダー・ソングを改めて取り上げることに対する照れが感じられるが、Annalise Domenighiniによると、ジャスティンは1895年の殺人事件に現代のナッシュビルを重ねあわせているという。
 
「だって、今の時代、誰も鋤や馬を題材にした歌になんて共感しないし、そもそも誰も馬と鋤で畑を耕したりなんかしていないだろ」というわけだ。
 
scituate.wickedlocal.comにジャスティンが語ったところによると、曲は100通りぐらいあるのに歌詞はアップデートされたことがなかったから、彼のヴァージョンではStagoleeをクラックの売人として描き、Stagoleeと敵対する男を登場させたという。
 
「だけど、物語はちゃんと続いている。そして、曲を聴いた人達は、人々がこういうトラブルを繰り返し続けてきたことを思い知るんだ」
 
「Same Old Stagolee」の“Same Old”は決して照れなどではなかった。相も変わらず、120年以上も前の殺人事件を歌いつづけている連中に対するもなのか、愚かな行為を相も変わらず繰り返している人間に対するものなのか、いずれにせよ、“Same Old”という言葉には、痛烈な皮肉が込められているみたいだ。
 
そんなところがジャスティン・タウンズ・アールらしい。
 
 
 
 
Jtejkt
Kids In The Street (New West)
 
 

|

« 2017年6月 | トップページ | 2017年8月 »