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4ADが惚れ込んだ異色の巨漢シンガー・ソングライター、JOHN MORELAND

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15年発表の『High On Tulsa Heat』で跳ね上がったジョン・モアランドの人気は今回、4ADから新作『Big Bad Luv』をリリースしたことで、さらに上がるに違いない。
 
斯く言う筆者も『High On Tulsa Heat』を聴き、見た目からの連想を裏切らないモアランドの無骨な歌心に魅了された一人だが、彼が4ADと契約したと聞いた時は、正直、自分の耳を疑った。なぜなら、モアランドは4ADのレーベルカラーと最も遠いところにいる存在だと思ったからだ。
 
バウハウスやコクトー・ツインズが輩出した頃のゴシック色は、かれこれ35年以上も前の話だが、所属アーティストの顔ぶれがどんなに変わっても、4ADには確固たるレーベルカラーがあった。
 
ひょっとしたら、モアランドが時折漂わせる退廃的というイメージは共通しているかもしれない。しかし、かつてここまでアメリカーナ色の濃い、見るからに暑苦しいアーティストが4ADに所属したことがあっただろうか?
 
モアランドの圧倒的な存在感を考えると、彼一人で4ADが40年近くかけて作り上げてきた、このレーベルならではの美学を覆してしまう恐れもあったかもしれない。しかし、それでも4ADはモアランドを迎え入れた。つまり、そこまでモアランドの才能に惚れこんでいたということだ――と、ここでは嘯いてみたい。
 
オクラホマ州タルサを拠点にしているジョン・モアランドは、85年6月生まれの32歳。
 
13歳の時にパンク~ハードコア・バンドを始めた彼は19歳の時、父が聴いていたスティーヴ・アールの歌にショックを受け、シンガー・ソングライターに転向した。
 
「04年にスティーヴ・アールが『Revolution Starts Now』をリリースしたんだ。その中の「Rich Man's War」という曲を聴いた時のことはいまだに忘れられないよ。誰かに胸を殴られたような気がしたんだ」
 
以来、その胸を殴られるような感覚を追い求めながら曲を書き続け、2年に1枚というペースでアルバムをリリースしてきた。
 
今回、4ADからリリースした『Big Bad Luv』は、ソロ名義でリリースする4作目のアルバムだ。自主リリースだった前作『High On Tulsa Heat』は実家のリビングルームで、両親の留守中に友人達の助けを借りながらも、ほぼ一人でレコーディングしてしまったが、今回はアーカンソー州リトル・ロックにあるちゃんとしたスタジオで、プロのエンジニアとともにレコーディングした全11曲を収録。レコーディングには『High On Tulsa Heat』にも参加していたジョン・カルヴィン・アブニー(ピアノ、ギター)、ジャレッド・タイラー(ドブロ)らに加え、ルセロのリック・ステフ(ピアノ)、シャヴェルズ&ロープ、ドウズのメンバーも駆けつけた。
 
 
 
 
賑やかだったに違いないスタジオの空気を反映しているせいなのか、モアランドがにわかに吹き始めた追い風を感じていたせいなのか、『Big Bad Luv』は前作の寂寥感に代わって、溌剌とした躍動感が聴きどころと言える作品になっている。
 
弾き語りの曲は別として、大半の曲をバンド・スタイルでレコーディングしたことも大きようだ。その意味では、ギター、ベース、ドラムスという基本編成にサポート・ミュージシャンがオルガン、ピアノ、ペダル・スティール、ドブロの音色を加えたことでリッチになったアンサンブルも聴きどころだろう。
 
筆者も含め、1曲目を飾る軽快なロックロールの「Sallisaw Blue」に驚いたファンも多かったと思うのだが、海外では“これまで悲嘆、喪失、孤独を歌っていたモアランドが希望と言ってもいい一筋の光も歌い始めた”と評判になっている。
 
「そんなに違う曲を書いているとは思わない。これまでだってポジティヴな要素は常にあった。それは明るいとは言えない曲でさえもね。少なくとも、俺の曲は自分が前に進むためにネガティヴな感情を追い払うためのものだった。ひょっとしたら、リスナーにもそれと同じ経験をしてもらえるかもしれない。その気持ちは今も変わらない。ポジティヴなものだと思う。今回のアルバムは確かに姿勢の変化はあるかもしれない。だけど、曲を作る時の俺の視点は変わってはいないんだ」
 
明るくなったかどうかはともかく、前述したようにアンサンブルがふくよかになったぶん、確実にこれまでよりも聴きごたえあるものになった。より多くの人に聴いてもらえるに違いない、このタイミングでそういう作品を作ったことには意味がある。
 
「バーの片隅で歌えればいいと思っていた。100ドル稼いで、家に帰って、翌朝、仕事に出かける。それで十分だった。だから、今、こんなことになるなんて思ってもいなかった。だけど、その一方では、こうなることを期待していたんだ。自分にはそれだけの才能があると感じていた。俺には常に自信があったよ。そう思うべきではない時でさえね」
 
4ADがどうしても契約したかったジョン・モアランドという才能に、ぜひ注目を。
 
吠えるように歌う嗄れ声も見た目もインパクトなら誰にも負けてはいない。
 
 
 
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Big Bad Luv (4AD)

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