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デビューから10年、JUSTIN TOWNES EARLEが自らの殻を破ることに挑んだ

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サポート・アクトおよびバッキング・バンドにセイディーズを迎え、計24都市を回った春のUSツアーが素晴らしかったに違いないジャスティン・タウンズ・アールが5月26日にリリースした7thアルバム『Kids In The Street』がマイク・モギスによるプロデュースだったなんて、実際にCDを手に取るまで知らなかった。
 
しかも、レコーディングはネブラスカ州オマハにモギスが所有しているスタジオ、ARCで行われた。つまり、ジャスティンはナッシュビルからオマハくんだりまでわざわざ出かけていったわけだ。
 
これまで自分が拠点としているナッシュビルの界隈と言うか、人脈の中でアルバムを作ってきたジャスティンがこれまでとは畑がちょっと違うプロデューサーと組んだところに自ら殻を破ろうとしたことが窺える。ご存じ、マイク・モギスはコナー・オバースト率いるブライト・アイズのメンバー兼プロデューサーだ。プロデューサーとしては、ブライト・アイズをはじめ、インディー・ロックおよびインディー・フォークのアーティストの作品を多数、手掛けている。
 
ジャスティンのセルフ・プロデュースによるナッシュビル録音だった『Single Mothers』(14年)と『Absent Fathers』(15年)の2部作も、テキサス州デントンのインディ・ロック・バンド、セントロ・マティックのリズム隊を起用していたことを考えると、自ら殻を破ろうとした作品だったのかもしれない。そこで手応えをつかんだのか、それとも物足りなかったのか。今回はレコーディングする環境もがらっと変え、前2作の試みをさらに推し進めたようだ。
 
因みに参加ミュージシャンの顔ぶれも、ジャスティンの作品にはもはや欠かせない存在と言ってもいいナッシュビルのベテラン、ポール・ニーハウス(ギター、ペダル・スティール)以外は一新。モギス人脈のミュージシャンに変わっている。
 
結果、ジャスティンのキャリアに新しい風が吹いたことを印象づけるアルバムが完成した。
 
 
 
 
ジャスティンのアイディアだったのか、モギスのサジェスチョンだったのか。ジャスティンというと、カントリーに加え、12年発表の4thアルバム『Nothing’s Gonna Change The Way You Feel about Me Now』(12年)でがっつりと取り組んだソウル・ミュージックのイメージがあるが、今回は曲ごとに趣向を変えた多彩なアレンジが、『Kids In The Street』を聴きごたえあるものにしている。
 
いかにも電気ビリビリって感じのギターの音がかっこいいロックンロールがあったり、ボブ・ディラン風のフォーク・ロックがあったり、ニューオーリンズ風のR&Bがあったり、ウェスタン・スウィングがあったり、弾き語りと電化両方のブルースがあったり――アップテンポの曲が多いせいなのか、それとも新しいタイプの曲に挑戦しているからなのか、いつもは憂いを含んだジャスティンの歌声も今回はずいぶんと生き生きとしているように聴こえる。ノスタルジックなカントリー・ナンバーの出来もいい。その味わい深さは格別だ。
 
『Kids In The Street』を聴いてしまうと、2部作という意欲作だったにもかかわらず、『Single Mothers』と『Absent Fathers』はちょっと覇気に欠けていたようにも感じられる。
 
10年に一度、活動を休んでリハビリに専念してから、ジャスティンの活動はすこぶる順調だったから、復活という言葉は当てはまらないかもしれない。しかし、順調すぎるあまり、どこかわくわくするような感覚が足りなかったこの数年を思えば(それはジャスティン自身、感じていたんじゃないか。だからこそのオマハ行きだったはず)、今後、ジャスティンのターニングポイントとして記憶されるに違いない『Kids In The Street』の鮮烈な印象に対しては、復活という言葉を使ってもいいんじゃないか。筆者はそんな気がしている。少なくともジャスティンに対する筆者の興味は、『Kids In The Street』をきっかけに、これまで以上に強いものになっている。
 
ドラムの音の処理やアンビエンスを意識した音響、演奏に加えた鉄琴の音色など、モギスによるものと思しき細かい音作りも『Kids In The Street』の聴きどころの一つ。モギスもジャスティンの熱意に応え、いい仕事をしている。
 
 
 
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Kids In The Street (New West)

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