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2010年8月

ケイトリン・ローズ

Caitlinrose

ここのところナッシュヴィル出身の女性シンガー・ソングライター、ケイトリン・ローズのデビュー・アルバム『Own Side Now』ばかり聴いている。

彼女が愛して止まない(70年代前半の)リンダ・ロンシュタットを思い描きつつ、ラムチョップのメンバーらと作り上げたカントリーとR&Bの折衷を思わせるサウンドが堪らない。

テイラー・スウィフトのヒット曲の作者として知られるリズ・ローズを母に持つ23歳。ケイトリン自身はナッシュヴィルのインディ・シーンで下積みを送ったのち、イギリスのレーベルに認められ、デビューのチャンスを掴んだ。

可憐な声で歌う赤裸々な男女関係があまりにも鮮烈だ。

恋愛を乗馬に例えた「Learning To Ride」の「テネシーの種馬は私を咲きかけの蕾と思い込んだ」なんてフレーズには思わずドキリとさせられる。

実体験が基になっているのかフィクションなのか、それはわからない。いずれにせよ、不実な男(達)との不幸な関係は、彼女の創作意欲を大いに刺激するらしい。 

もっとも取り上げるテーマは恋愛だけというわけではない。

ニューヨークを訪れた時の経験を歌ったと思しき「New York」は、いかにも南部っ娘らしい少女の冒険譚。

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「テネシー、私が戻ったらかまわないで。私があなたの物だなんて言わせないわ。私はもう昔の私じゃないのよ」

大都会を冒険したとき、彼女の中で一体、どんな変化があったのか?

そんなことを想像しながら聴いていると、彼女の歌により一層、愛着が湧くのである。

9月~10月はディア・ティックと一緒にヨーロッパをツアーする。

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Own Side Now / Caitlin Rose (Names NAMES42CD)

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GOOD 4 NOTHING

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前作から2年ぶりとなる6作目のアルバム『BACK 4 GOOD』を、9月22日にリリースするGOOD 4 NOTHINGにインタビュー。

メンバーに話を聞くのは久しぶりだ。

結成以来、活動を共にしてきたドラマーの脱退から新ドラマーの加入を経て、新しいアルバムを完成させるまでの激動の10ヶ月についてじっくり話を聞いてきた。

インタビューは、9月30日発売のインディーズ・イシューに掲載。

今現在の、ありのままの自分達を聴いてほしいというメンバー達の想いが詰まった『BACK 4 GOOD』。

これまで以上に愛着が持てるという意味で傑作になったと思う。

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デビュー25周年を迎えたSIONの新作は豪華2枚組!

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大河ドラマで主演を務める、あの俳優(兼シンガー)もリスペクトしてやまない孤高のシンガー・ソングライター、SIONの新作(タイトル未定)はデビュー25周年を記念した豪華2枚組なんだそうだ。

しかも、オリジナル・アルバムと「お祝い盤」と題したトリビュート盤のカップリング!

すでに参加が発表されたKen Yokoyama以外のトリビュート盤の参加アーティストは随時発表される予定だとか。ミュージシャン仲間にシンパの多いSIONだけに豪華な顔ぶれが揃いそう。うー、顔ぶれが気になる。

因みにKenさんは、あの名曲をカヴァーするそうだ!

新作のリリースは10月20日。

その1ヶ月前の9月22日には久々のシングル「からっぽのZEROから/そしてあ・り・が・と・う」もリリースされる。

そして10月23日には恒例の日比谷野音ライヴ「SION-YAON2010」の開催も決定!!

今年も行くぞー。

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猫毛フェルト

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猫をブラッシングしたときに取れる抜け毛を原料にしたフェルトで、指人形などの雑貨を作る「猫毛フェルト」が、猫好きの間で静かなブームになっていると聞き、その教室を取材してきた。

記事はコチラ

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メイレイ インタビュー

「永遠のハーモニー」の大ヒットから3年。
メイレイが美メロと冒険心が詰まった新作をリリース

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きっかけはジェントルなピアノの音色フィーチュアしたせつないラヴ・ソング「永遠のハーモニー」の大ヒットだった。

カリフォルニア州オレンジ・カウンティ出身の4人組、メイレイ。

輸入盤から火がついた、彼らの人気はやがて当時、ブームになっていたピアノ・エモの範疇を越えて広がっていき、08年のフジ・ロック・フェスティバル出演を含む3度の来日も実現した。

それから3年。新ドラマーを迎えたメイレイが3枚目のアルバム『ザ・マスカレード』を完成させた。

「永遠のハーモニー」路線の「二人のムービー・スクリーン」他、ロックからバラードまでメイレイ節満載の新作には、同時にアフリカ音楽の影響を取り入れた「ザ・バラード・オブ・ユー・アンド・アイ」やエレクトロなダンス・ビートを使った「イモータル」など、これまでの彼らとは違う大胆なアプローチの曲も収録されている。

メンバー達は「美メロ系のピアノ・バンド」という殻を破ろうと考えていたにちがいない。そんな思いは外部のソングライターと曲作りしたことや複数の一流プロデューサー達を起用したことからも明らかだ。

8月末のプロモーション来日に続いて、10月の東名阪ツアーも決定した。

新作について、メンバー達に話しを聞いた。

●3年ぶりの新作『ザ・マスカレード』がリリースされましたね。

リッキー・サンズ(ギター)「最高の気分だね。今回は、ただ新しい方向性のアルバムを作っただけに止まらず、より進歩的な方向に進んだんだ。このアルバムをレコーディングしたことで、音作りやサウンド・プロダクションの新しい技術をいろいろ学べたよ。アーティストとして、そしてミュージシャンとして新鮮な気持ちと興奮を持ったままキャリアを続けていける方法がわかったんだ。その気持ちを世界中のリスナーと分かち合いたいね」

クリス・クロン(ヴォーカル、ピアノ、ギター)「新作を作っている最中、僕らの人生においていろいろなことが起きたんだよ。親戚が亡くなったり、マネージャーを何度か変えたり、バンド・メンバーが抜けたりね。それでも僕らは逆境を乗り越えてアルバムを完成させた。落ち込んでいたときは、このアルバムが完成しないんじゃないかとか、リリースされないんじゃないかとかと思うこともあった。だから、アルバムが完成して本当にホッとしている。肩の荷が下りたような気分だね。これからライヴで新曲を演奏できるんだと思うとわくわくするよ。曲ってライヴで演奏すると、レコーディングしているとき以上に愛着が湧くからね」

●今回、ドラマーが前2作のマイク・ネイダーからデレク・ロックに変わったんですよね。

クリス「みなさん、これが僕らの新しいドラマーのデレクだよ!」

リッキー「デレク・ロックと紹介すればいいのか? それともデレク・リー?」

デレク・ロック「僕はデレク・ロックだよ!」

クリス「彼は本当にロックな男なんだ。彼は前のドラマーよりも激しくドラムを叩くんだ(笑)」

デレク「ありがとう(笑)」

リッキー「彼がドラムを叩くと、男性ホルモンを注射されたような気分になるよ(笑)。彼は朝からステレオでリンプ・ビズキットを爆音で流して、僕らを起こすような奴なんだ(笑)。実はデレクとはずっと前から友達なんだ。デレクとクリスは、僕がクリスと出会う前から、一緒にバンドをやっていたんだよ」

クリス「デレクが13歳で、僕が15歳のときにスカ・バンドをやっていたんだよ」

ライアン・マロイ(ベース)「ずっと以前、メイレイにドラマーがいなかったとき、デレクが代理で叩いてくれたことも何度かあったよ」

リッキー「デレクと一緒に演奏するチャンスがあるときは、いつも演奏するようにしていたよ。最終的に彼を加入させるチャンスが訪れたわけだけど、彼が加入したことで、メイレイの理想的なラインナップが完成したと思う。僕らは音楽的にも人間的にも共通の目標を共有しているんだ」

●前のドラマーの マイクは大学に戻ったそうですね?

リッキー「そう、彼はバンドを辞めて、大学に戻ることにしたんだ。彼のヴィジョンは僕らとはちょっと違ったんだ」

●新作はメイレイらしい美しいメロディーを軸にしながらロック・ナンバーからバラードまで、幅広い楽曲揃った作品だと思いました。新作を作るにあたっては、どんな作品にしたいと考えていましたか? 

クリス「コンセプトはいつも後から見えてくるんだ。アルバムを作りはじめたときから、コンセプトが決まっているわけじゃない。初めは幅広いテーマで曲を作って、後から絞り込んでいく。今回、アルバムを作りはじめてすぐにわかったのは、ただラウドなだけじゃなくて、よりタフなサウンドの作品を作りたかったってことだった。前作よりも荒削りな作品を作りたかった。僕らが作る曲は必ずキャッチーでポップだから、それは変わらない。だから、音的にもっとディープな作品にしたかったんだよ。何て言うか、もっとザラザラしたリアルなサウンドのアルバムにしたかったんだ」

リッキー「デレクが加入したことで、エネルギッシュで、いかにもロックなヴァイブが注入されたよ。彼がドラムを叩いたことで、迫力のあるサウンドになったんだ。だから彼が参加して、何百万倍もよくなったね(笑)。新しいメンバーが加入したことで、新鮮な空気が吹き込まれて、曲がさらに良くなったんだ。まさに僕らが必要としていた変化だったんだよ」

クリス「前作は磨かれたキレイなサウンドだったからね。今回は、もっとダーティーでパンチのあるドラム・サウンドに仕上げたかったんだ」

リッキー「ギターは必ず曲に入れないといけない、というルールからも離れたかった」

クリス「そう。典型的なギター・リフを入れるんじゃなくて、曲に新たな色彩を加えるためにギターを使ったんだ。ピアノについても同じことが言えるよ。今回は曲の中でずっと演奏したわけじゃないんだ。ピアノの音色を一つの要素として使った曲もある。そして、ヴォーカルは、よりアグレッシヴに歌った。バンドのリード・シンガーであることを、もっと前面に出したんだ。前作はクリス・クロンという一人の名義で出してもおかしくないサウンドだったからシンガーソングライター的な歌い方をしたんだけどね。でも、新作はバンド・サウンドであることと、その中心にリード・シンガーがいることを強調したかったんだ」

●前作のハワード・ベンソンに代えて、今回はジョシュ・エイブラハムズ、ジャックナイフ・リーら、複数のプロデューサーに起用していますね。

リッキー「複数のプロデューサーと仕事をしたかったんだ。今振り返ってみると、新作のテーマは"成長"だったと思う。僕らはソングライターとして成長したかったし、バンドとしても、ミュージシャンとしても成長したかった。複数のプロデューサーと曲を作ると、自分の意志や音楽性が試されるんだ。プロデューサーのアイディアをただ真似るのではなく、彼らのアイディアを曲の中にうまく取り入れるという意味でね。ジョシュは力強いポップ・ロックの要素を持ち込んでくれたし、ジャックナイフ・リーは実験精神を持ち込んでくれた。ジャックナイフ・リーは、いつもとは違うアプローチを見せてくれたんだ。複数のプロデューサーと仕事をしたのは正しかったね。自信を持つことができるようになったし、メイレイらしさを明確にすることもできたんだからね」

クリス「僕らがはっきりとした方向性を示さないといけなかったんだよ。何人ものプロデューサーと仕事をすると、バラバラで一貫性のない作品になる恐れがある。だから、僕ら自身が明確な方向性を示して、どのプロデューサーとレコーディングするときでも、それを貫いたんだ」

●「ザ・バラッド・オブ・ユー・アンド・アイ」のコーラスはアフリカ音楽の影響を感じさせるけど、そのアイディアはどんなところから?

クリス「ワールド・ミュージックとかトライバル・ミュージックとかは前から好きだったんだよ。だから、そういう要素を、オーガニックな方法ではなく、人工的なサウンドの中に取り入れてみたんだ。この曲のメロディーは、トライバルでアフリカっぽいリズムに向いていた。よく聴かないとわからないかもしれないけど、それがこの曲を際立たせていると思うよ」

●「イモータル」ではエレクトロなダンス・ビートを使っているけど、ふだんエレクトロ・ミュージックも聴いたりするんでしょうか?

リッキー「「イモータル」は後の方に作った曲なんだ。今回は、いろいろなタイプの曲を作りたかったから、こういう曲も作ってみた。今までのメイレイとは違うタイプの音楽的要素も、自信を持って取り入られるようになったってことだよ。クラブ・ミュージックや最近の音楽を聴いたり、世界中をツアーしたりしていると、ダンス・ミュージックがいかに人気があるかがわかるよ。みんなダンス・ミュージックが大好きなんだよ。だから、それをフェイクではない、自分達なりの方法で取り入れてみた。「イモータル」では壮大なアンセムを、躍動感あるエレクトロニクスと融合させることができたと思う」

●日本語の歌詞を含むクイーンの「手をとりあって」をカヴァーしたいきさつは?

クリス「僕らと同じぐらいクイーン・ファンの友人がその曲について教えてくれたんだ。彼とある日、クイーンの曲ではどれが好きかって話しあっていたとき、『「手をとりあって」は知ってる?』と聞かれたんだけど、なぜか僕らはその曲だけは聴き逃していたんだ。彼に聴かせてもらって、すぐに気に入ったよ。この曲をカヴァーすれば、僕らがクイーンの大ファンだってことと日本が大好きだっていうことを同時に示すことができると思って、カヴァーすることにしたんだ」

●新作はメイレイについて、どんな作品になったと考えていますか?

リッキー「最新作が最も重要な作品なんだよ。でも、新作を含む3枚のアルバムのうち、新作は僕らの音楽性を最も正確に表した作品だと思う。1枚目の『エヴリデイ・ビヘイヴィア』はエレクトロニクスやシンセを取り入れた実験的な作品だったけど、新作はどちらかというと、その1枚目の続編かもしれない。前作の『デヴィルズ・アンド・エンジェルズ』の続編ではないよね。あのアルバムは僕らにとって、自分達のソングライティングの土台になる作品だったんだ。前作を作ることで、バンドとソングライターとしての自分達を理解することができた。新作は前作のソングライティングと『エヴリデイ・ビヘイヴィア』の実験精神を融合させたと言ってもいいかもしれないね」

クリス「『デヴィルズ・アンド・エンジェルズ』では、サウンド面でのトレードマークがあまりはっきりしていなかった。もちろん、曲に適したサウンドは作り出せたし、曲に適したアレンジもできた。そういう意味では、前作にはとても満足しているよ。でも、新作ではバンドとして、僕らがクリエイトしたいと考えていたサウンドを、理想的な形で作り上げることができたんだよね」

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ザ・マスカレード/メイレイ(ワーナー WPCR-13882)

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ウィーザーがエピタフ・レコードに電撃移籍

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94年のデビュー以来、長年在籍してきたゲフィン・レコードを離れ、去就が注目されていたリヴァース・クオモ率いるウィーザーがエピタフ・レコードに電撃移籍。9月14日に8枚目のアルバム『ハーリー』をリリースする(日本盤は10月27日予定)。

1ヶ月ほど前、とある集まりの席で、誰かが「まさかエピタフじゃないよね(笑)」と冗談で言っていたことが現実になった。

「僕達のキャリアから考えて、今、ウィーザーにはメジャー・レーベルは必要ないと思ったんだ。自分達のやりたいことに対して、より小回りがきいて、より的確に行動できる場所はここだった、少なくても今はね。さらに言えば、僕達はブレット・ガーヴィッツ(エピタフのオーナー)が大好きなんだよね」(リヴァース・クオモ)

アルバム・タイトルは、ジャケットにアメリカの人気テレビドラマ『LOST』でヒューゴ(ハーリー)レイエス役を演じているホルへ・ガルシアを起用したことと、「今までのセルフ・タイトル同様、絶対に『ハーリー・アルバム』と呼ばれることになるだろうから」という理由で『ハーリー』と命名した。
「今作のタイトルには本当に悩んだね。4枚目のセルフ・タイトルにだけはしたくなかった。そんなときガルシアの写真を見つけて、その写真が放つヴァイブに一目惚れしたんだ」

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↑↑これがジャケット?!

すでにネット上で試聴することができる1stシングル「メモリーズ」の他、新作にはエルヴィス・プレスリーの「イン・ザ・ゲットー」の作者として知られるマック・デイヴィス、ライアン・アダムスと共作した「タイム・フライズ」(リヴァースによると、ギターがバリバリと唸るクラシックな60年代風のポップ・ソングだそうだ)や、60年代風のブルー・アイド・ソウル・ナンバーにメタリカのギター・サウンドを加えた「ハング・オン」、ビートルズの「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」あるいは安っぽいビーチ・ボーイズ調の「スマート・ガール」といった曲が収録されているんだとか。

前作『ラディ・テュード』からわずか1年。バンドにとって新機軸と言える多彩な曲にアプローチした前作から一転、今回はなんとなく、ストレートかつシンプルなギター・ロック・サウンドが楽しめそうだ。

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ザ・ライオット・ビフォア インタビュー

J.ロビンズと新作を完成させた熱血パンク・バンド

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ヴァージニア州リッチモンドの熱血パンク・バンド、ザ・ライオット・ビフォア。

結成以来、真摯な態度と並々ならぬ情熱とともに続けてきた精力的な活動が認められ、アメリカのパンク・シーンで、この2年ほどの間にめきめきと頭角を現してきた。

彼らが注目されるきっかけは地元のインディー・レーベル、セイ・10・レコードから08年にリリースした2ndアルバム『Fists Buried In Pockets』だった(あるいはブロードウェイ・コールズとリリースしたスプリットだったか?)。ちょうどそのとき、アメリカではショウビズの世界からパンク・ロックを、自分達の手に取り戻そうという気運が高まりつつあった。フォーキーともブルージーとも言える味わいも持ち合わせていた彼らは、そんなパンクの回帰運動を担う存在としても歓迎された。

今年4月、バンドはレス・ザン・ジェイクのドラマー、ヴィニー・フィオレロのレーベル、ペーパー+プラスティックから3作目のアルバム『Rebellion』をリリース。プロデューサーのみならず、エンジニアとミキサーも務めたJ.ロビンズと完成させた、その最新アルバムではロビンズ印のゴツゴツと尖がったサウンドとともにバンドのスケールアップを印象づけ、さらなる注目を集めた。

サンフランシスコのナッシングトン、ナッシュヴィルのブラックリスト・ロイヤルズとUSツアーを終えたばかりのバンドを代表してフロントマンのブレット・アダムズ(Vo, G)にインタビュー。その饒舌ぶりからもバンドに賭ける彼の情熱は伝わるはずだ。

●ライオット・ビフォアは、どんなふうに始まったんですか?

「最初は03年頃、俺がカレッジに通っていたカリフォルニアのサンタバーバラで始めたんだ。そのバンドは計6回、俺が通っていたのとは別の、近所にあるカレッジのパーティーでライヴをやっただけなんだけど、メンバーにしてもサウンドにしてもダイナミックさに欠けていた。それに俺が思い描いていた音とは何かが違っていた。
 悪くはなかったんだよ。ただ、正しくなかったんだ。で、メンバーを追い出すのではなく、俺は別のバンドに加わるという大人気ないことをやって、バンドの練習のスケジュールを組まなかった。結局、他のメンバーはそれを知って、バンドは解散してしまったんだ。
 その6ヵ月後、俺はライオット・ビフォアを再び始めた。ただ、その時はバンドを組む前にデモテープを作ろうと思い、俺が作った曲をレコーディングしたんだ。そのデモはその後、『Horseshoes And Hand Grenades』と題した1stアルバムのレコーディングにつながったんだけど、俺がギターを弾きながら歌い、友人のスティーヴがドラムとベースを演奏したんだ。
 それから数ヵ月後、俺はヴァージニア州リッチモンドに引っ越したんだ。それがまさに3度目の正直だった。リッチモンドで俺はバンドに専念することにした。数ヵ月かけて、固定メンバーを見つけ、できるかぎりツアー活動に取り組んだ。最初のライヴからもう4年以上経つよ。俺達はこれまでに400回以上のライヴをやってきたんだ」

●なぜ、カリフォルニアからリッチモンドに引っ越したんですか?

「05年の春、カレッジを卒業することになって、俺は卒業後の身の振り方について、いろいろ決断しなきゃいけなかった。結局、俺は数年の間は自分が作りたいと思う曲を作りながら過ごそうと考えた。ただ、カリフォルニアでそれをやろうとは思わなかった。だって、カリフォルニアには俺の嫌いなタイプのバンドしかいなかったからね」

●嫌いなタイプと言うと?

「イメージとコネばかり追求している、音楽的には薄っぺらい連中だよ。俺は多くのバンドが気取ったプレス写真を撮ることやマネージャーを雇うことに時間を費やしている姿を見てきた。連中は注目されようと必死になっていたよ。連中は自分達がいつも語っているような音楽なんて演奏していなかった。
 そんなのナンセンスだろ。
 関心を持ってもらうには、まず関心を持ってもらえるような曲を作らなきゃ。お客さんの気持ちは金では買えない。信頼してもらうしかないんだ。
 別にパンク・バンドをやっているから、そんなことを言っているわけじゃない。これは個人的な話だよ。自分のやってきたことを振り返ったとき、キャリアの長さよりも、その中身を誇りに思えるようなことをやりたいんだ。
 物語を作ることやそれを語ることに興味があったから、カレッジでは文学を専攻したんだけど、俺はいつの間にか文学よりもバンド活動に夢中になってしまったんだ。俺の人生において、音楽が一番重要なものになった。だから、真剣にバンドをやろうと思ったとき、安っぽいバンドだけはやりたくないと考えた。それならカリフォルニア以外じゃなきゃダメだと思ったよ。ただ、物価が安くて、ツアーに出たときガソリン代を抑えるために、いろいろな街に近くて、それなりに音楽シーンがあるようなところじゃないとダメだった。候補としていろいろな街を検討した結果、あらゆる条件を満たしているリッチモンドに決めたんだ。
 それだけで十分だった。そこがどんなところなのか知る必要はなかったよ。俺は全財産を車に積んで、リッチモンド目指して3、000マイルのドライヴに出たんだ。もう5年前の話だよ。今思えば、それはたぶん俺がこれまでしてきた中で最良の決断だったんじゃないかな」

●リッチモンドで新たにバンドを始めたとき、どんなバンドにしたいと考えていたんですか?

「もう1枚目のアルバムをリリースしていたからね。バンドのスタイルや方向性という意味では、すでに基礎は出来上がっていた。
 俺は生まれつきのギタリストってタイプじゃない。正直、ギターは苦手なんだ。ギターを習得するには俺には忍耐が足りなかった。だから、バンドを始めたとき、自分が何を演奏するかってことは、そんなに意識していなかった。
 自分はギターが下手だってことがわかっていたからね。バンドを始めたときもテクニックでファンを魅了しようとは思わなかった。テクニックを磨くかわりに俺は人々が共感できる説得力と熱心さを持った曲を作ることに力を入れてきた。そうすれば俺達が持っているハンディキャップを乗り越えられると期待していたんだ」

●ライオット・ビフォアというバンド名はどこからつけたんですか?

「長いこと、大音量を出せるギター・アンプを持っていなかったんだ。俺が持っていたアンプは小さな練習用のアンプだった。それじゃドラムの音にかき消されてしまうような音しか出せなかった。バンドを始めるには、もっとパワーのあるアンプが必要だったんだ。
 だから、アンプを買うために働いて、金を貯めはじめた。だけど、ちょうどアンプを買えるだけの金が貯まった頃、車が故障したため俺の銀行口座は空っぽになってしまって、また一から始めなきゃならなかった。とても落胆したよ。
 カレッジに2年通った後、俺は渋々、夏の間、家を離れて、アンプを買えるだけの金を貯めるという希望を抱いて、農場で働いたんだ。あの頃はフルーツを箱に詰めながらいつもバンドで演奏している自分の姿を想像していた。あのフルーツは確か日本に出荷されたんじゃなかったかな(苦笑)。
 大勢の人の前で演奏することを夢見ながら、俺はそこを離れようと何年もがんばってきた小さな町の農場でこき使われていた。働きづめで疲れていた。欲求不満もたまっていた。とにかく音楽を演奏したかった。暴動を起こせそうな気がしたよ。俺の気持ちは、まさに不正に対する怒りを吐き出せずにいる群衆のそれだった。
 人間は何かを変えたいと思う気持ちや目的を達成したいという欲求から暴動を起こすんだ。その時の俺は気持ちのうえでは、もう暴動を起こしたも同然だった(It riots before.)。そして、思ったんだ。アンプを手に入れることができる金を貯めたら、ライオット・ビフォアという名のバンドをやろうってね」

●ところで、どんなバンドやアーティストに影響を受けてきたんでしょうか?

「俺達の、特に初期の曲を聴いてもらえれば明らかだと思うんだけど、最も影響を受けていると言ったら、アゲインスト・ミー!だろうね。彼らの"Impact"って曲を初めて聴いたときは、ぶっ飛んだよ。 だって、ヴォーカルのトム(・ゲイベル)は歌い終わったら死んでしまってもかまわないってくらいの気迫で絶叫していたんだからね。そのとき、ああ、俺はこういうことをやりたいんだって思ったよ。
 何年もパンクを聴いてきたけど、その瞬間、全てが変わった。アゲインスト・ミー!の曲が、野心と言うにはあまりにも曖昧だった俺の気持ちにはっきりした方向性を与えたんだ。
 ボブ・ディランがウディ・ガスリーを初めて聴いたとき、ガスリーの存在がいかにディランに刺激を与えたか何かで読んだことがあるんだけど、確かにディランの最初の何枚かのレコードは、ガスリーの影響が明らかだよね。そういう時代を経て、ディランは自分自身の歌声を見つけると、多くの人に影響を与えると同時に真似されるような曲を書きはじめたんだ。たとえばブルース・スプリングスティーンはまさにそんなディラン・フォロワーの一人だよ。
 アゲインスト・ミー!は、俺にとってウディ・ガスリーみたいな存在なんだ。あ、いや、もちろん自分がボブ・ディランだなんて言ってないぜ。
 でも、ライオット・ビフォアにしてもアゲインスト・ミー!にしても、現在は"Impact"の頃とは全然違うサウンドになっているところが、俺はとてもクールだと思うんだよ」

●ライオット・ビフォアのことをフォーク・パンクと呼ぶ人達もいますね?

「別にかまわないよ。だって、みんなはフォーク・パンクって言葉を軽蔑の意味で使っているわけじゃないだろ。ただ、俺は単にフォーク・パンクって言葉だけで、俺達のバンドを言い表せるとは思ってはいないけどね。
 俺は自分のバンドを、他のバンドとは全然違うものにしたいと思った日から、いろいろなサウンドを出せるようになりたいと考えてきた。さっきアゲインスト・ミー!に最も影響を受けたと言ったけど、俺達が影響を受けたのは、決してそれだけじゃない。俺達が受けてきたさまざまな影響をバンドの音に反映させたかったんだ。だってメンバーが4人もいれば、受けてきた影響はより幅広いものになるはずだろ。
 自分のバンドに何かジャンルを表すようなレッテルは貼りたくない。一度、そういうレッテルを貼ってしまったら、バンドのサウンドは狭まってしまうような気がするんだよ。
 とは言え、みんなレッテルを貼るのが好きだよね。それはしたかない。だけど、たとえパンクというレッテルを貼られたからって、俺はパンク・バンドになるつもりはない。もちろん、それはフォークだって同じことだよ。俺はただ、いい曲を作りたいだけなんだ」

●新しいアルバムの『Rebellion』について聞かせてください。前作『Fists Buried In Pockets』との違いは、どんなところでしょうか?

「俺達は『Rebellion』を作ることで、自分達のサウンドを確立できたんだ。『Rebellion』では俺達が受けてきた影響がはっきりと表れていると思うんだけど、それと同じぐらい俺達らしさも表れている。言ってみれば、『Rebellion』はライオット・ビフォアが初めて作った代表作なんだよ。とてもわくわくするよ。
 もちろん、前作から劇的に変わったわけじゃない。だけど、バンドが自分達のサウンドに自信と確信を持った結果にはちがいないと思うんだ。
前作を作ったときは、前のギタリストが突然止めてしまったせいで、スタジオに入るわずか2ヶ月前に新しいギタリストを入れなきゃいけなかった。新ギタリストのジョン(・グリーリー)はすぐに曲を覚えて、レコーディングまでに自分のパートを考えなきゃいけなかった。俺達と一度もライヴを経験することなしにね。
 でも、それからずっと同じメンバーでやってきた。しかも、たくさんのライヴもやってきたし、同じ音を共有するために多くの時間を一緒に過ごしてきた。そういうやりかたで形になったものが『Rebellion』の新しい曲とサウンドなんだ」

●『Rebellion』のレコーディングでJ.ロビンズをプロデューサーに起用した理由は?

「何人かの候補に打診するとき、俺達はバンド全員の希望としてJの名前を挙げたんだ。だけど、まさか彼とレコーディングできるとは全然考えてなかったけどね。
 だから、俺達は彼が俺達とレコーディングすることに同意してくれたとき、とても驚いたよ。彼はすごい経歴の持ち主で、俺達全員が大好きなレコードをたくさん手掛けてきた。しかも、ジョーボックスとバーニング・エアラインズという素晴らしいバンドのメンバーだった。レコーディングしている間中、俺達全員、ソングライターとしてもすごい才能を持っている人と同じスタジオにいることに興奮したし、俺達の曲を最高の形にする方法をアドバイスしてもらえるんじゃないかって期待したよ。
 彼が手掛けてきたレコードはすべて、90年代のグランジが持っていた美学を捉えた確固たるサウンドを持っていた。エネルギーと音の精度という1枚のレコードに封じ込めることが難しい要素を、同時に捉えるノウハウを持っているんだよ。レコーディングしている間、彼のやることは常に俺達の期待をはるかに上回っていたね。俺達全員、レコードを作る過程と完成した作品の両方にとても満足しているよ」

●前作には、フォーキーな「Words Written Over Coffee」という曲が収録されていたけど、新作では、そういうフォーキーな曲はやっていませんね?

「意識してそうしたわけではないんだ。『Rebellion』にそういう曲が収録されていない理由は、ただ、今回はたまたまそういう曲を書かなかったというだけだよ。
 俺達はソングライターとしては、決して多作なほうではない。実際、今回、アルバムには10曲収録したけど、俺達が作った曲は全部で11曲だった。
 曲は俺の頭の中の、どこかの部分の賜物だと思っているんだけど、去年、そこからフォーク・ソングは生まれなかった。もちろん、フォークっぽい曲はまだ好きだし、『Rebellion』にそういう曲が入ってないからって、これからもずっとそのままというわけではない。ただ、今はね、これまでのアルバムよりも一貫してヘヴィーな『Rebellion』が気に入っているんだ。そういうサウンドがまだ始まったばかりの俺達のディスコグラフィーの中で、『Rebellion』ってアルバムを際立たせていると思うしね」

●アルバム・タイトルの『Rebellion』(=反逆)とは何に対する反逆なのでしょうか?

「09年の3月、俺はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中の有名な『大審問官』(The Grand Inquisitor)をもう一度読み直そうと考えていた。その本を読んでからもう何年も経っていたから、その章に感銘を受けたことは覚えていたけど、それが何について書かれていたかについてはすっかり忘れてしまっていたんだ。
 それで、前後関係を改めて把握するため、その章の前にある『反逆』(Rebellion)って章から読みなおそうと考えた。そこでは登場人物の一人であるイワンが信じられないくらい動機づけされ、信仰を持たずに生きることと神の存在を信じることが決して矛盾しない考えであるという理に適った主張をしていた。
 イワンは、こう言うんだ。『おれは神を受け入れないわけじゃない。おれはたんにその入場券を、もう心からつつしんで神にお返しするだけなんだ』。それに対して、イワンの兄弟、アリョーシャが『反逆ですね』と答えると、イワンは今度はアリョーシャに、こんなふうに言うんだ。『反逆だって? おまえがそんな言葉を吐くとねえ。反逆なんかで生きていけるのか、おれは生きたいんだぞ』ってね。
 その最後の文章を読んだとたん、俺は俺達のバンドが次に作るレコードは何らかの形で、それに言及したものになるだろうと悟ったんだ。
 それから何ヶ月も俺は『反逆なんかで生きていけるのか、おれは生きたいんだぞ』という文章が何を意味しているのか考え、答えを見つけるために評論を何百ページも読んだよ。そして、反逆の中に創造はない、ただ拒絶があるだけだという結論を見出した。
 確かに場合によっては、あらゆることにノーということは大切だ、特に若いときはね。だけど、少なくともそれをライフスタイルにするべきではないんだ。ノーと言いつづける人生は、とても困難なものになるだろう。
 個人的なことを言えば、27歳の俺にはこれは響いたね。俺はずっと自分の中に反逆心を持っていたからね。しかも、この数年、俺は信仰を持っていなかったため、ちょっとした苦しみの状態にあった。俺の反逆心は俺を意地の悪い、とても頑固な冷笑主義者にしたんだ。しかし、本当のチャレンジは拒絶の中にはないということに気づいてから、俺は自分にふさわしいチャレンジが何であるか探しはじめたんだ」

●ペーパー+プラスティックとはどんないきさつで契約したんですか?

「『Fists Buried In Pockets』をリリースして少し経ってからペーパー+プラスティックのオーナー、ヴィニー(・フィオレロ)から『Fists Buried In Pockets』を気に入っているという手紙を貰ったんだ。とても光栄だったよ。だからお礼の返事を書いたんだ。すると、その数ヵ月後、彼がまた手紙をくれた。そこには彼がどれだけ『Fists Buried In Pockets』を気に入っているかということが書かれていた。それで俺達はまた返事を書いて、今度は『将来、俺達のレコードをリリースすることに興味はあるかい?』と尋ねてみたんだ。すると、ヴィニーは大いに興味があるよと言ってくれたんだ」

●最後の質問です。ライオット・ビフォアにとってゴールとは?

「とても単純だよ。みんなのために音楽を演奏しつづけることだよ。近い将来、日本でも演奏できたらいいね。もし実現したら、そんなに素晴らしいことはないよ。俺達はこのバンドを続けるためにデイジョブを持っているんだけど、音楽だけで食べていけるようになれたら言うことはないね。それがもう一つのゴールかな。とにかく俺達は、みんなのために演奏するのが大好きなんだ。そして、人々が俺達の音楽を聴くことを楽しんでくれるなら言うことはないね」

Rebellion

Rebellion / The Riot Before (Paper+Plastick PP0042)

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ファンファーロ@サマーソニック2010

Fanfarlo

今年のサマーソニックで特に印象に残ったバンドの一つがファンファーロだった。

今年3月、SXSW開催中のオースティンで彼らのデビュー・アルバム『レザヴォア』を購入したものの、結局、観ることができなかったライヴを、今回、観られるというわけで、とても楽しみにしていた。

06年頃、活動を開始したロンドンの5人組。自身のレーベルから09年2月に『レザヴォア』をリリース後、メジャー・レーベルと契約を結び、同年10月、『レザヴォア』を再リリースする形でメジャー・デビューを飾った。

彼らの音楽性を語るとき、オーケストラル・ポップとかチェンバー・ポップとかという言葉が使われることが多いようだが、今回観たライヴは決してそんな気取ったものではなく、マンドリン、フィドル、メロディカ、トランペット、鉄琴、クラリネットといったさまざまな楽器をとっかえひっかえしながら、ネアオコ風の歌を楽団風に演奏した賑やかかつ、とても楽しいものだった。

ライヴに定評があるというのも大いに頷けた。

気持ちが逸ると、フォーク・パンク風になるようなところはライヴならではだろう。ガシャガシャした演奏は、ヴァイオレント・ファムズをちょっと思い出させるものだった。

アルバムの印象とは若干違って、最近、僕が好んで聴いているアメリカの今のフォーク・バンドに近い感覚も窺え、そんなところもいいなぁと感じたのだ。

Reservoir
レザヴォア/ファンファーロ(ワーナー WPSR-13863)

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ダックス・リグス

Daxriggs

最近は前作が当たったウエーヴスやメジャーのコロムビア・レコードとジョイントベンチャーという形でリリースしているバンド・オブ・ホーシズに力を入れているせいか、割を食っているような印象があるけれど、ダックス・リグスが07年にリリースした『We Sing Of Only Blood Or Love』は確かに当時、リリースが停滞していたファット・ポッサム・レコードの起死回生の1枚だった。

ブラック・キーズの大ヒット以降、決定打を出せずにいたファット・ポッサムは、その『We Sing Of Only Blood Or Love』がなければ、ひょっとしてデルタ・ブルースのアーカイヴとリイシュー専門のレーベルになっていたかもしれない。

実際、『We Sing Of Only Blood Or Love』は、ポップなところもあるパワフルなゴシック・ブルースの傑作だった。

ソロに転じる前、女性ドラマーと組んでいたデュオ・バンド、デッドボーイ&ザ・エレファントメンを含め、似たようなバックグラウンドを持っているジャック・ホワイトと比べてもリグスの才能は、何ら遜色はなかった。

ニューオリンズ出身の37歳。キャリアのスタートはスラッジ・メタル・バンド、アシッド・バスのシンガーだった。その時代から数えれば、キャリアは20年に及ぶ。

3年ぶりとなるソロ第2弾アルバム『Say Goodnight To The World』は前作を踏襲したゴシックなブルース作品だ。しかし、じっくりと作りこんだ印象の前作と比べると、ずいぶん生々しい。マット・スウィーニーのプロデュースの下、曲ごとにそのスウィーニーも含む複数のミュージシャンを使いわけた前作とは違い、今回はリグスを含む4人編成のバンドでレコーディングに臨んだようだ。プロデューサーは、前作にも参加していたキーボード奏者のロビー・リーが務めた。それがスタジオからそのまま持ってきたような生々しさにつながった。

たぶん、時間をかけずに曲が持っているフィーリングを活かす形でレコーディングは行われたのだろう。

完成度の高さという意味では前作に譲るものの、そのメランコリーによってリスナーを虜にするという意味では、今回もリグスが作った曲はどれも素晴らしい。

聴いているうちにジョン・ケイルがプロデュースしたストゥージズの1stアルバムを思い出した。「Let Me Be Your Cigarette」は曲調も含め、「I Wanna Be Your Dog」を意識したにちがいない。「Heartbreak Hotel」の大胆すぎるカヴァーは、リグス版の「We Will Fall」か。

本人にそういう色気がないのか、いまだ知る人ぞ知る存在に甘んじてはいるものの、もっと多くの人に知られるべき才能の持ち主だ。

ファット・ポッサムはダックス・リグスをもっと大事にすべきである。

Saygoodnight

Say Goodnight To The World / Dax Riggs (Fat Possum  FP1220-2)

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