NIKKI LANEだけじゃない!カントリー・シーンを騒がせるバッド・ガール達

Nikki Nikki Lane

 
 
みんなが待っているニッキー・レーンの新作『Highway Queen』がリリースされたら、それが追い風になって、同じようにアウトローなイメージを打ち出している女性アーティスト達が注目されるんじゃないか。
 
 
Highwayqueen Highway Queen (New West)
 
  
 
 
 
 
 
バンド活動を経て、ソロに転向したマーゴ・プライスとデビュー以来、順調にリリースを重ねてきたリディア・ラヴレス。ふたりが昨年、リリースしたアルバムがそれぞれに大歓迎されたことは、その前兆のように思える。
 
 
 
Margo Margo Price
 
 
Midwest Midwest Farmer's Daughter (Third Man)
 
歌詞の世界観、サウンドとともに70年代のアウトロー・カントリーを踏襲しながら、
バンドの演奏には若干、ガレージ/サイケ風味が加えられている。
 
 
 
 
 
 
Lydialoveless Lydia Loveless
 
 
 
Real Real / Lydia Loveless (Bloodshot)
 
前2作以上にロック色濃い作品に。
 
 
 
 
 
 
そこで、ここでは彼女達に続く存在として、すでに注目を集め始めているふたりのアーティストを取り上げてみたい。
 
ひとり目はリディア・ラヴレスが所属しているシカゴのレーベル、ブラッドショットが新たに契約したノース・カロライナ州チャペル・ヒルのサラ・シュークだ。
 
 
Sarah Sarah Shook
 
もう見た目からしてやばい雰囲気がぷんぷんだ。
 
現在、30歳のシングル・マザー。
 
キリスト教根本主義の家庭で育ったため、17歳になるまでいわゆるポピュラー・ミュージックは聴いたことがなかったそうだ。友人にベル&セバスチャンとディセンバリスツを聴かせてもらったことをきっかけにアコースティック・ギターを弾き始め、やがて厳格な家庭で育った反動なのか、カントリー・ミュージックが持っているダーク・サイドに惹かれたという。
 
結婚、出産、離婚、そしてソロ活動を経て、初めて組んだバンドの名前が、サラ・シューク&ザ・デヴィル。ノース・カロライナを拠点にライヴを行い、ファンを増やしていったが、『Seven』という7曲入りのアルバムを13年7月にリリースしたのち、ほどなく解散。その後、組んだバンドがサラ・シューク&ザ・ディスアームズだった。
 
ブラッドショットから4月28日にリリースする『Sidelong』は、実は15年に自主リリースしたアルバムのリイシューだ。まずは、そこに収録されている12曲を、より多くの人に聴いてもらってから、来年のリリースを目指して、新曲に取り組む予定だそうだ。
 
 
Sidelong Sidelong (Bloodshot)
 
 
 
 
 
 
けだるさの中に凄味が感じられる『Sidelong』収録の「Heal Me」のビデオからは、パンクあるいはグランジなメンタリティと言うかアティテュードが窺えるが、昨年の7月、「10 New Country Artists You Need to Know」の一人にサラを選んだ米ローリング・ストーンは、「クラシックなカントリーが持つ冷酷なまでの率直さに惹かれた生まれながらのパンク」と評した。
 
ブラッドショットのショウケースに出演することが決まっている今年のSXSWでもサラ・シュークと彼女のバンドは、大歓迎されるにちがいない。
 
 
 
そして、ふたり目は2月24日、『Felony Blues』をリリースするジェイミー・ワイアット。ロサンゼルスを拠点にしている彼女の経歴がなかなかすごい。
 
 
Jaime Jaime Wyatt
 
 
 
Felonyblues Felony Blues (Forty Below)
 
 
ワシントン州タコマ近郊のフォックス・アイランドにある農場で育った彼女は14歳の頃からカフェなどで歌い始めたという。
 
17歳の時、主に映画やテレビドラマのサントラをリリースしているレイクショア・レコードのオーナーに認められ、ジェイミーは04年、ジョシュ・ハーネット主演の『ホワイト・ライズ(Wicker Park)』に提供した「Light Switch」でデビュー。その後、ソロに加え、アメリカン・ブルーマーズ、キャリコ・ザ・バンドというグループも掛け持ちする彼女の活動は順調に思えた。しかし、ドラッグに溺れ、しまいにはドラッグ欲しさに売人を襲った罪で逮捕されてしまった。
 
ホンモノじゃん!!
 
つまり、『Felony Blues』は、8か月の服役とリハビリ、そして3年の保護観察を経て、音楽活動を再開したジェイミーが再起をかけて作り上げた1枚というわけだ(因みに逮捕されたことによって、大物プロデューサーと作り始めていたというアルバムはお蔵入りしてしまったし、現在、キャリコ・ザ・バンドのプロフィールではジェイミーの存在はなかったものにされている)。
 
痴情のもつれ、服役といったアウトロー・カントリーで取り上げられる題材を歌った収録曲の数々が、ほぼジェイミーの実体験だと思えば、聴こえ方もまた違うものになるにちがいない。
 
ドラッグに手を出さなければ、もしかしたらカントリー・シーンのメインストリームで活躍していたかもしれない。しかし、僕は彼女の音楽に興味を持つことはなかっただろう。こういう形で実現したジェイミーの再出発を歓迎するリスナーは、きっと少なくないはずだ。
 
『Felony Blues』にはシューター・ジェニングス、ライアン・アダムスのバッキングを務めたミュージシャンやパンチ・ブラザーズのメンバーが参加しているそうだ。60年代~70年代のカントリーやロックンロールに影響を受けたというジェイミーをバックアップする名うてのミュージシャン達の演奏も聴きごたえがありそうだ。
 
 

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LISA LEBLANCがフォーク・シーンに炸裂させたロックな爆音

Lisaleblanc2

 
 
いろいろな意味ですごいよ、リサ・ルブラン。“Folk trash”を掲げるシンガー・ソングライター/ギタリスト、そしてバンジョー弾き。
 
一応、フォーク畑のアーティストということになってはいるが、10代の頃はロックばかり聴いていたというし、そもそも広い世界に出ていきたいと考えていたその当時は故郷のことばかり歌っているブルーグラスもカントリーも大嫌いだったという。だからなのか、その表現はとにかくパワフルかつエネルギッシュ、そしてダイナミックというところが頼もしい。
 
しかも、12年にリリースしたデビュー・アルバム『Lisa LeBlanc』に収録されている「Chanson D'une Rouspéteuse」(ジョニー・キャッシュのカヴァーを歌っている歌手は嫌い、と歌っている)のアレンジは、ガン・クラブの「Preaching The Blues」を下敷きにしているように思えるし、昨年9月にリリースした2ndアルバム『Why You Wanna Leave Runaway Queen?』ではバンジョーをかき鳴らしながらモーターヘッドの「Ace of Spades」を、原曲に近いアレンジでカヴァーしているんだから、興味を抱かずにいられなかった。
 
 
 
 
歌声もパフォーマンスも、ついでに見た目もド迫力だが、90年8月生まれというから、まだ26歳。
 
カナダ東部のフランス語圏の町、ニュー・ブランズウィック州ロセールヴィルに暮らす音楽一家に生まれ育ったというリサは、14歳でギターを弾き始め、17歳になる頃にはバーで演奏するようになっていたという。最初はカヴァーが中心だった。それから徐々にオリジナルを増やしていき、現在の自分がある、と彼女はとあるインタビューで語っていたが、実は18歳の時、モントリオール近郊の町、グランビーにある音楽学校に通い、作曲を学んでいる。その時、ホームシックになった彼女は故郷に思いを馳せながらブルーグラスやカントリーを聴き始めると、バンジョーを買って、突然、ブルーグラスのフェスティバルに行こうと思ったそうだ。
 
その後、40年の歴史を誇る音楽コンクールで自作曲が受賞したことをきっかけに注目された彼女は12年、全曲フランス語で歌った『Lisa LeBlanc』でデビュー。それがカナダ国内で9万枚を超えるセールスを記録する大ヒット作となった。14年には活動を英語圏にも広げることを視野に入れ、英語で歌ったEP『Highways, Heartaches and Time Well Wasted』をリリース。カレン・ダルトンの「Katie Cruel」のカヴァーを含む全6曲を収録したそのEPもヒット。『Lisa LeBlanc』と『Highways, Heartaches and Time Well Wasted』の累計セールスは現在、14万枚を超えているという。
※『Lisa LeBlanc』と『Highways, Heartaches and Time Well Wasted』の2枚は、大阪のBSMF RECORDSが国内配給している。
 
 
Lisa Lisa LeBlanc (Bonsound)
 
 
Highway Highways, Heartaches and Time Well Wasted (Bonsound)
 
 
そのことが、もっと大胆になってもいいんだと彼女に思わせたのかもしれない。昨年、リリースした『Why You Wanna Leave Runaway Queen?』は、彼女の根っこにあるロックに回帰した野心作となった。これまでだってフォークと言うには、あまりにも型破りだったが、さらにロック色濃いサウンドにアプローチしている。
 
 
Runawayqueen Why You Wanna Leave Runaway Queen? (Bonsound)
 
 
その成果が前述したモーターヘッドのカヴァーなのだが、もちろん、それだけではない。哀愁のカントリー・ロック・ナンバー「City Slickers and Country Boys」では、まるでハード・ロック・バンドのように2本のリード・ギターを泣かせているし、フランス語で歌った「Ti-gars」でザクザクと刻むエレキギターはまるでガレージ・ロックみたいだし、そもそも低音と歪みを強調して、ズドドーンと轟かせるサウンド・メーキングがもはやフォークの範疇を逸脱しているんだから痛快すぎる。
 
その一方では、アコースティック・ギターで弾き語ったフォーク・バラードの「5748 km」、バンジョーを奏でながらフランス語で歌ったトラッド・フォーク調の「Eh cher (You’ve Overstayed Your Welcome)」、バンジョーの速弾きを披露するブルーグラス・ナンバー「Dead Man’s Flats」といったフォーク系の曲の出来もいい。中でも一番の収穫は、ハワイアン(・ミュージック)も大好きだというリサがラップ・スティールをフィーチャーした「Dump the Guy ASAP」。女友達に不実な恋人とは、さっさと別れたほうがいいと勧める辛辣な歌詞とは裏腹にノラ・ジョーンズが歌っても似合いそうな洒脱な軽やかさが感じられるところなどは、新境地と言ってもいいかもしれない。
 
 
 
 
そんな曲の数々を収録した『Why You Wanna Leave Runaway Queen?』は、国内のアルバム・チャートで8位を記録した。それだけ多くの人が彼女の挑戦を歓迎したということだ。
 
これが受け入れられたんだったら――。リサ・ルブランの音楽は、これからもっともっと大胆に変化していきそうだ。
 
 
 
 

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ELLEN SUNDBERGの『White Smoke and Pines』は音響系カントリーの傑作

Ellensundberg

 
聴きたいと思いながら、ずっと聴きそびれていたエレン・サンドベリのアルバムを、たまたま中古で見つけ、早速、購入してみたところ、聴いてからしばらくは彼女のことしか考えられないぐらい気持ちを揺さぶられてしまった。こんなことならもっと早く聴いておけばよかった。
 
それが『White Smoke and Pines』。エレンが15年3月、21歳の時にリリースした2ndアルバムだ。
 
 
White White Smoke and Pines (Rootsy)
 
 
スウェーデン北部に位置する小さな町、ビャーネにある食料雑貨店で働きながら音楽活動を始めたエレンが世に出るチャンスを、どんなふうに掴んだのか詳しいことはわからない。とにかく思慮深さと大人びた風情が入り混じるソングライティングに加え、意思の強さが窺える歌声が認められ、彼女は13年8月、『Black Raven』でデビューを飾ると、早速、アルバムをサポートするため国内をツアー。さらにはアメリカのシンガー・ソングライター、イスラエル・ナッシュとともにヨーロッパを回った。因みにデビューするまで、ホームタウン以外で演奏した経験は、ほとんどなかったそうだが、彼女のパフォーマンスにすっかり魅入られてしまったのが、彼女をサポート・アクトに抜擢したイスラエル・ナッシュと彼のバンドのメンバー達だった。
 
 
Black Black Raven (Rootsy)
 
ナッシュのラブコールによって、14年2月、ナッシュが住んでいるテキサス州オースティン近郊の美しい町、ドリッピング・スプリングスでレコーディング・セッションが実現した。プロデューサーはナッシュ自ら務め、演奏はナッシュのバンドが担当。ナッシュの自宅のリビングルルームで行われたセッションを、ナッシュの作品の他、ガスライト・アンセムやカート・ヴァイルらの作品を手がけてきたエンジニア、テッド・ヤングがレコーディングした。
 
その成果が『White Smoke and Pines』なのだが、エレンの才能のみならず、この才能豊かなシンガー・ソングライターの存在を、もっと多くの人に知ってもらいたいというナッシュらの情熱も躍動感あふれる演奏とともにとらえられている。
 
胸の内からあふれ出そうになる感情をぐっと飲みこみながら、メランコリックなメロディーを何度も重ねる歌から、その感情が湧きたつようなところがいい。凄味なんて表現も使いたくなるエレンの歌を包みこむバンド・サウンドも聴きどころだ。サウンド・エフェクトを担当する“noise”とクレジットされたメンバーも参加しているのだが、前作『Black Raven』のルーツ・ロック・サウンドの延長上で、音響系ともサイケデリックとも言えるサウンドがエレンの歌の世界に奥行きを加え、ミステリスアスとも言える深い味わいを生み出している。
 
 
『White Smoke and Pines』の収録曲
 
 
アルバムの完成後、SXSWやナッシュビルで開催されたアメリカーナ・フェスト(アメリカーナ・ミュージック・フェスティバル・アンド・カンファレンス)に出演したエレンはその後、ナッシュビルの路上で歌っていたところを見出され、ホームレスら一躍、スウェーデンの人気No.1シンガーになったダグ・シーガーズとスウェーデンをツアー。その模様がダグの人生を追ったドキュメンタリーの一部として、スウェーデンでテレビ放映され、エレンの存在もより多くの人に知られることとなった。
 
エレンは昨年8月(9月?)、3作目のアルバム『Cigarette Secrets』をリリースしている。よりストレートで、より多くの人に受け入れられる作品を目指したというそこではダンサブルなビートも含め、自分の殻を破ることに挑んでいる。
 
 
Cigarette Cigarette Secrets (BGM Scandinavia)
 

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R.E.M.の元メンバーら80's以降のUSインディの立役者達が参加するライヴ・イベントが日本で開催!

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80年代のUSインディ・ロックに興味がある人なら絶対楽しめるに違いないライヴ・イベントがここ日本で開催される。それが2月7日、そして9日と10日、京都と東京で開催されるICE STATIONだ。
 
イベントの詳細は、特設サイトで!
 
ICE STATIONは北極圏における地球温暖化の影響を訴えるロンドン在住のアーティスト、ミシェル・ノアクの活動を支援するイベントとしてスタートした。15年11月、北極圏に位置するノルウェーの小さな町、ヴァドソー(バツェ)で開催された第1回目には、ピーター・バック、マイク・ミルズといったR.E.M.の元メンバーに加え、ジョン・ポール・ジョーンズ、テリー・エドワーズ、ティム・キーガンら多くのミュージシャンが参加。そして、2回目の開催となる今回の京都・東京公演の参加者として、グリーンランドのNo.1人気ロック・バンド、ナヌークとともに80年代以降のUSインディ・ロック・シーンで活躍してきたミュージシャン達が来日するというわけだ。
 
その顔ぶれはピーター・バックマイク・ミルズ、グランジ・ブームの下、改めて注目されたシアトルのパンク・バンド、ファストバックスのメンバーして知られるカート・ブロック、ヤング・フレッシュ・フェローズ、R.E.M.(のサポート)、マイナス5など、さまざまなバンドでプレイしてきたスコット・マッコーイー、80年代のガレージ/サイケ・リヴァイヴァル・ブーム=ペイズリー・アンダーグウンドの中核バンドだったドリーム・シンジケートの元リーダー、スティーヴ・ウィン、そしてウィンの奥さんで、彼のバッキング・バンド他でもプレイしているドラマー、リンダ・ピットモンの計6人。
 
 
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(左上から)カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコーイー、
マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーヴ・ウィン
 
 
ライヴはナヌークが1時間、演奏した後、休憩をはさんで、この6人がステージに立ち、R.E.M.、ピーター・バックのソロ、マイナス5、ドリーム・シンジケート、カート・ブロック以外の5人が組んだベースボール・プロジェクトの曲を演奏する予定だという。
 
これまで何度も共演してきたメンバー達だ。きっと素晴らしい演奏を披露するに違いない。個人的にはドリーム・シンジケートの曲を聴けたらうれしい。
 
 
15年のICE STATION。
ジョン・ポール・ジョーンズを迎え、 ドリーム・シンジケートの「The Medicine Show」を
演奏している。
 
 
フォーク・ロック調のバンドが多かったペイズリー・アンダーグラウド・シーンにおいて、フィードバック・ノイズを巧みに操りながらギターを轟音で鳴らしていたドリーム・シンジケートは、個人的には同じ頃、シーンに台頭してきたR.E.M.よりも衝撃だった。レイン・パレードとカップリングだった初来日公演を、ガラガラの渋谷公会堂に見に行ったことは、いい思い出だ。
 
89年にドリーム・シンジケートが解散してからもスティーヴ・ウィンはソロのみならず、数々のサイド・プロジェクトを立ち上げながら精力的に活動してきた。何年か前、スティーヴ・ウィン&ザ・ミラクル・スリーのライヴを、オースティンのアイリッシュ・パブで見たことがあるが、その熱演は酔客達の目を釘付けにするほど迫力があった。
 
ロビン・ヒッチコックとジョイントだった06年のマイナス5の来日公演も素晴らしかった。その時はスコット・マッコーイーにインタビューする機会をいただき、大好きなリッキー・ネルソンの話で盛り上がったのだった。
 
ああ、なんだか楽しい思い出がいろいろ蘇ってきた。2月のICE STATIONもそんな楽しい思い出の一つになるような気が今からしている。
 

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あけましておめでとうございます

Photo

 
 
無事、新年を迎えることができました。

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ニュージーランドの憑依系(?)フォーク・シンガー、ALDOUS HARDING

Aldousharding

 
改めてニュージーランドのルーツ・ロック~アメリカーナ・シーンに目が向いたきっかけは、ノワールな魅力もあるシンガー・ソングライター、マーロン・ウィリアムズだった。
 
その彼が今年2月にリリースしたセルフタイトルのデビュー・アルバムは、迷わず16年のアルバム・ベスト10の1枚に選ぶぐらいの愛聴盤だったが、そのアルバムをプロデュースしていたベン・エドワーズがプロデュースしているからという理由で、オーストラリアの女性シンガー・ソングライター、ジュリア・ジャックリンがニュージーランドに赴き、レコーディングしたデビュー・アルバム『Don’t Let The Kids Win』を聴いたみたところ、フォークの影響とオルタナ/ローファイ感覚、そしてオールディーズ風味が入り混じるなかなかの良作だったので、それならとベン・エドワーズの仕事を頼りにニュージーランド・シーンを掘っていったら、タミ・ニールソンオルダス・ハーディングらに出会うことができた。
 
 
Marlonwilliamsjkt Marlon Williams / Marlon Williams (Dead Oceans)
 
Juliajacklinjkt Don't Let The Kids Win / Julia Jacklin (Polyvinyl)
 
Tamineilsonjkt Don' t Be Afraid / Tami Neilson (Neilson)
 
Aldoushardingjkt Aldous Harding / Aldous Harding (Lyttleton)
 
 
同時にジュリア・ジャックリンマーロン・ウィリアムズオルダス・ハーディングらを取り上げている英ガーディアンの「A different country: why 2016’s exciting new Americana is Antipodean」という記事を見つけ、オーストラリアおよびニュージーランドの現在進行形のアメリカーナ・シーンが注目されていることもわかってきた。
 
このまま掘り続ければ、まだまだいろいろなアーティストに出会えるような気がするが、今一番、気になっているのがマーロン・ウィリアムズのガールフレンドだというオルダス・ハーディングだ。
 
ニュージーランド第2の都市、クライストチャーチ近郊の町、リトルトン出身の27歳。本名のハンナ・ハーディングで参加したフォーク・バンド、イースタンを経て、ソロに転向した彼女はベン・エドワーズとニュージーランドの怪人ミュージシャン、ディレイニー・デヴィッドソンに見出され、14年に新たな名前をタイトルに冠した『Aldous Harding』でデビュー。そこにはトラッド・フォークともアシッド・フォークとも言える自作の9曲が収められていた。
 
 

 
因みにオルダスという名前は、オルダス・ハクスリーに由来するのかと、とあるインタビューで尋ねられ、彼女は単に響きが良かったからつけたと答えている。
 
歌声に聴く者の心を搦めとるような魅力がある。
 
メランコリックな歌声とともに彼女が曲に宿らせる切迫したムードから思わず魔女系なんて言葉を思い浮かべしてしまうが、彼女が歌っている強烈な姿を見てしまうと、むしろ憑依系という言葉がふさわしいようにも思える(顔が怖い!)。
 
鬼気迫る姿に胸を射抜かれた。
 
 
 
ハーディングは来年3月、PJ・ハーヴェイの右腕として知られるジョン・パリッシュとレコーディングしたニュー・アルバム『Party』をリリースするという(パリッシュとレコーディング経験があるオーストラリアの女性シンガー・ソングライター、ローラ・ジーンのサジェスチョンだった?)。そこではフォークに止まらない新たな魅力をアピールしているそうだ。
 
『Party』のリリースが今から待ち遠しい。

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LAST HURRAH 2.0 presents Best 10 albums 2016 ②

Grapesofwrath

 
 
以前、LAST HURRAHというファンジンを作っていたとき、主に誌面で取り上げていたルーツ・ロック~アメリカーナをテーマに(でも、そこはゆる~く)2016年のベスト・アルバムを10枚ずつ選んでみたところ、他にはないおもしろいベスト10になりました。その第2弾です。
 
 
 
 
【これからの活躍が楽しみになる、かっこいいアーティストのデビューもたくさん】
by 堀口 知江(ホリグチ チエ)
 
 
Luke
■ I’m Glad Trouble Don’t Last Always / Luke Winslow‐King (Bloodshot)
 
 
Case
■ case / lang / veirs  / case / lang / veirs (Anti-)
 
 
Jessedayton
■ The Revealer / Jesse Dayton (Blue Elan)
 
 
Teddy
■ Little Windows / Teddy Thompson & Kelly Jones (Cooking Vinyl)
 
 
Nada
■ You Know Who You Are / Nada Surf (Only In Dreams)
 
 
Chelle
■ Blue Ridge Blood / Chelle Rose (Li'L Damsel)
 
 
Sera
■ Get Gone / Seratones (Fat Possum)
 
 
Xylaroo
■ Sweetooth / Xylaroo (Beat)
 
 
Margo
■ Midwest Farmer's Daughter / Margo Price (Thirdman)
 
 
Lucky
■ Coming Home / Lucky Lips (Vestkyst)
 
 
たくさん聴いた10枚を選んでみました(順不同)。
 
この中だと、ルーク・ウィンズロウ・キングのアルバムが特に心に残っています。自分を曝け出して音楽と向き合っていると、きっとそれは言葉をも超えて、人の心を揺さぶることができるなぁと改めて感じた美しいアルバムでした。
 
今年は偉大な方々の死もありましたが、これからの活躍が楽しみになる、かっこいいアーティストさんのデビューもたくさんあったのでは! セラトーンズやザイラルーは誰に聴かせても、みんなかっこいいと言ってくれたり、マーゴ・プライスはアルバムのタイトル、アートワーク、歌詞カードまで洒落ていて完璧でした。この他にもL.A.サラーミやアディア・ヴィクトリアもよかったです。
 
17年は、ニッキー・レーンの新譜が楽しみなのと、個人的にはキャット・クライド(Cat Clyde)に注目したいです。…と偉そうに言ってないで自分の活動もがんばります(笑)。
 
 
 
 
【改めて目を向けたニュージーランド・シーンに来年も期待】
by 山口 智男
 
 
Corallee
■ The Weather Vane / Coral Lee (Rhythm Bomb)
 
 
Dawes
■ We’re All Gonna Die / Dawes (Hub)
 
 
Freakwater
■ Scheherazade / Freakwater (Bloodshot)
 
 
Hamilton
■ I Had A Dream That You Were Mine / Hamilton Leithauser + Rostam (Glassnote)
 
 
Kyle
■ Dolls Of Highland / Kyle Crft (Sub Pop)
 
 
La
■ Dancing With Bad Grammar / L.A. Salami (Beat)
 
 
Leralynn
■ Resistor / Lera Lynn (Resistor)
 
 
Marlonwilliams
■ Marlon Williams / Marlon Williams (Dead Oceans)
 
 
Richmondfontaine
■ You Can’t Go back If There’s Nothing To Go Back To / Richmond Fontaine (Fluff And Gravy)
 
 
Shovelsandrope
■ Little Seeds / Shovels & Rope (New West)
 
 
アルファベット順。ドーズが一皮剥けたのは今回初めて組んだプロデューサー、ブレイク・ミルズ(サイモン・ドーズ時代のバンドメイト)によるところが大きいかもしれない。昨年のアラバマ・シェイクスといい、今回のドーズといい、ベスト10には入らなかったけど、ジム・ジェームズのソロといい、これからもミルズの仕事には注目していきたい。
 
ニュージーランド・シーンに改めて目を向けさせたマーロン・ウィリアムズを手がけたプロデューサー、ベン・エドワーズの仕事を辿っていったら、タミー・ニールソン、ジュリア・ジャックリンとつながっていった。エドワーズの仕事も今後、要注目。
 
17年はスティーヴ・ガンがプロデュースしたマイケル・チャップマン、セイディーズ、ニッキー・レーン、フレイ・フォー・ア・リフ・ラフ、そしてマーロン・ウィリアムズのガールフレンド、アルドュス・ハーディングのジョン・パリッシュプロデュースによる新作が今から楽しみだ。
 
 

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LAST HURRAH 2.0 presents Best 10 albums 2016 ➀

Grapesofwrath

 
以前、LAST HURRAHというファンジンを作っていたとき、主に誌面で取り上げていたルーツ・ロック~アメリカーナをテーマに(でも、そこはゆる~く)2016年のベスト・アルバムを10枚ずつ選んでみたところ、他にはないおもしろいベスト10になりました。
 
 
 
【他にも入れたいバンド/シンガーはたくさんいるが、今日の気分はこんなリスト】 
by 山本 尚
 
 
Dbt
① American Band / Drive by Truckers (ATO)
 
 
Wilco
② Schmilco / Wilco (Warner Music Japan) 
 
 
Andy
③ The Party / Andy Shauf (Anti-)
 
 
Johnk
④ Winter Wheat / John K. Samson (Anti-)
 
 
William
⑤ Modern Country / William Tyler (Merge)
 
 
Avett
⑥ True Sadness / The Avett Brothers (Republic)
 
 
Jay
⑦ Paging Mr. Proust / The Jayhawks (Sham)
 
 
Whi
⑧ Light Upon the Lake / Whitney (Secretly Canadian)
 
 
Lydia
⑨ Real / Lydia Loveless (Bloodshot)
 
 
Conor
⑩ Ruminations / Conor Oberst (Warner Music Japan)
 
①のDBTは聴いた瞬間、年間1位と決めた好作。いままでDBTをあまり聴いてこなかったけれど、タイトルに惹かれ聴いてみたら、最初から最後までタイトルを裏切らない素晴らしいアルバム。曲順も最高。僕の仕事の一つはデータ・ベースを構築することなのだが、このアルバムを聴くとテンションがあがり作業がすごくはかどった。
 
⑤はウィルコのドラマー、グレン・コッツェも参加している最高のインスト・アルバム。1曲目はエンドレスで聴いていられるくらい、メロディーとビートのグルーヴが心地よい。因みに、このアルバムはデータを整理する際に聴くと作業がはかどった。
 
この他にもセラトーンズ、フェリース・ブラザーズ、マーロン・ウィリアムズ、リッチモンド・フォンテーン、アーロン・リー・タスジャンなど入れたいバンド/シンガーがたくさんいるが、今日の気分はこんなリストです。きっとあまり知られていないカナダ人シンガー③、ぜひ注目を!
 
 
 
 
【悲報続きで憂鬱な一年を慰めた、いつもながらのおっさんセレクト】
by 早川 哲也
 
 
Jessedayton
■ The Revealer / Jesse Dayton (Blue Elan)
 
 
Dex
■ Carrboro / Dex Romweber (Bloodshot)
 
 
Themonsters
■ M / The Monsters (Voodoo Rhythm)
 
 
Kid_2
■ La Arana Es La Vida / Kid Congo & The PinkMonkeybirds (In The Red)
 
 
Scots
■ The Electric Pinecones / Southern Culture On The Skids (Kudzu)
 
 
Johndoe
■ The Westerner / John Doe (Cool Rock)
 
 
Kingdude
■ Sex / King Dude (Ván)
 
 
Slim
■ The Commandment’s According to SCAC / Slim Cessna’s Auto Club (Glitterhouse)
 
 
Hillbillymoon
■ With Monsters And Gods / The Hillbilly Moon Explosion (Clouds Hill)
 
 
Cohen
■ You Want It Darker / Leonard Cohen (Sony Music Japan)
 
 
アメリカーナと呼ぶには相当強引なのも混じってますが、10枚選んでみるといつもながらのおっさんセレクト(順不同)。
 
モンスターズは祝30周年!ということで、新譜と同時にリリースされたレーベル所属の濃すぎるアーティストが集結のトリビュート盤も最高。
 
女性ヴォーカル物が漏れてしまったけど、トランスヴィジョン・ヴァンプ時代から大好きなウェンディー・ジェームズの新譜はよく聴いた。
 
ボウイ、プリンス、ヴェガ、コーエン、ノートン・レコーズでお馴染みビリー・ミラー…悲報続きで憂鬱な一年でしたが、Fallen AngelsとBlue & Lonesomeな両大御所の健在ぶりは凄すぎて恐ろしいです。
 
 
 
 
LAST HURRAH 2.0 presents Best 10 albums 2016 ②につづく。

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DRIVE BY TRUCKERSの最新アルバム『American Band』がちょっと残念な理由

Dbt

 
内容は申し分ない。
 
じゃあ、なぜ残念なのか。それは01年発表の『Southern Rock Opera』以降、8枚のオリジナル・アルバムを含め、ほぼ全てのアルバムのカヴァーに使われてきたウェス・フリードの絵が今回、『American Band』では使われずに写真だったからだ。
 
 
Dbtamericanbandjkt
American Band (ATO)
 
 
ドライヴ・バイ・トラッカーズのCDを買うことは、フリードの作品をコレクションすることでもある、と考えているのは、きっと僕だけではないはずだ。そんな人達にとっては一大事。
 
ブックレットの中面とCDの盤には、ちゃんとフリードの絵があしらわれているから、アメリカの現状を歌うアメリカのバンドという自負がある彼らが今回、歌おうとしているものを象徴するには、半旗として掲げた星条旗の写真を、どうしても使う必要があったということなんだろう。
 
99年にリリースしたライヴ盤『Albama Ass Whuppin'』を13年にリイシューしたとき、バンドは元々、写真を使っていたアルバム・カヴァーを、フリードの絵に改めている。そこにはフリードの絵に対する愛着が感じられる。そう言えば、パターソン・フッド(Vo&G)が09年にリリースした2枚目のソロ・アルバム『Murdering Oscar (And Other Love Songs)』のカヴァーもフリードの絵だった。
 
 
Southernrockoperajkt_2
Southern Rock Opera (Lost Highway)
 
 
Alabamaasswhuppinjkt
Alabama Ass Whuppin' (ATO)
 
 
Murderingoscarjkt
Murdering Oscar (And Other Love Songs) / Patterson Hood (Ruth St.)
 
 
それでも今回は、この写真が使いたかった。
 
それを考えながら、『American Band』を聴けば、きっと曲の聴こえ方もバンドがそこに込めたメッセージの重みも違ったものになるはずだ。

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私生活の変化が作風に表れたLUKE WINSLOW KINGの最新作

Lukewinslowking

 
ニューオーリンズのミュージシャン、ルーク・ウィンズロウ・キングのブラッドショット・レコードからの3作目となる『I’m Glad Trouble Don’t Last Always』のアルバム・カヴァーを見たとき、ちょっとびっくりだった。
 
なぜなら、前作『Everlasting Arms』ではルークともとにアルバム・カヴァーに登場し、前々作『The Coming Tide』では写真にこそ写っていないものの、「Featuring Esther Rose」とクレジットされていた公私にわたるパートナー、エスター・ローズ・キングの姿も名前もなかったからだ。
 
あれっと思い、ブックレットでレコーディングの参加メンバーを確かめてみたところ、そこにもエスターの名前はなかった。どういうことなんだろうとブックレットの左隅に目をやると、「This album is dedicated to Esther Rose King」という書き出しで、彼女に対する感謝に加え、喪失と傷心の思いが綴られていた。
 
なんとルークはエスターと離婚していたのだった。
 
離婚の直前、ルークはマリファナ所持の罪で逮捕、収監されたというから、ひょっとしたらエスターから三行半を突きつけられたのかもしれない。
 
ともあれ、『I’m Glad Trouble Don’t Last Always』の収録曲は、離婚の話し合いの最中に書かれたものばかりだそうだ。
 
「自分のファンに対して正直にならなきゃいけないし、それには自分自身を曝け出さなきゃいけないと感じていた」
 
ルークは新作について、そんなふうに語っているが、アルバム表題曲や「No More Crying Today」が再出発を思わせる一方で、「Change Your Mind」「Heartsick Blues」「Esther Please」「Act Like You Love Me」といったタイトルからはエスターに対するルークの未練が窺えはしないだろうか? 「Act Like You Love Me」なんて曲調がバウンシーなだけにかえって痛々しい。
 
Lukeesther こんな幸せな日々もあった…
 
 
ブルースのミュージシャンと言われながら、ブルースのみならず、これまでフォーク、オールド・タイミーなジャズ、ロックンロールといった幅広い音楽にアプローチしてきたルークが『I’m Glad Trouble Don’t Last Always』では、アコースティック・ギターで弾き語るフォーク・バラードの「Heartsick Blues」以外はブルースを歌っている。
 
そのせいか、『I’m Glad Trouble Don’t Last Always』にはギターの腕前も含め、エリック・クラプトン、いや、ジョン・メイヤーのファンにも薦めてみたい魅力も感じられる。そこが今回のアルバムは新しい。
 
因みにエスターは現在、エスター・ローズ名義で音楽活動を行っている。
 
 
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I’m Glad Trouble Don’t Last Always(Bloodshot)

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