リンプ・ビズキットのウェス・ボーランドが作ったという衣装はアダム・アントとサザン・デス・カルトを意識しているんだとか
もちろんアルカライン・トリオは解散したわけではない。今年の秋に予定している新作のレコーディングに向けて、マット・スキーバとダン・アンドリアーノはすでに曲作りを始めているという。
しかし、マットが海外のメディアに語ったところによると、AFI、マイ・ケミカル・ロマンスという人気バンドのメンバーが顔を揃えたマット・スキーバ&ザ・シークレッツはサイド・プロジェクトなどではなく、あくまでもバンドだとマットは考えているそうだ。
アルカライン・トリオと比べ、よりソングライティング重視だという今回のプロジェクトは元々はマットのソロ・アルバムとしてスタート。その後、プロデューサーを務めたキャメロン・ウェブにジャロッド・アレキサンダーを薦められ、彼のプレイを気に入ったマットはジャロッドと2人でレコーディングを開始した。
ジャロッドはデス・バイ・ステレオ他、多くのバンドでプレイしてきた名うてのドラマーだ。2011年からはマイ・ケミカル・ロマンスのツアーに参加している。
ジャロッドとともにギター、ギター、キーボード、ドラム・パートをレコーディングしおえると、マットはAFIのベーシスト、ハンター・バーガンに声をかけた。ハンターとは長年の友人関係にあるマットはいつかドリーム・バンドを組む時は、ベースはハンターに頼もうとずっと考えていたという。
ハンターの参加を得て、完成させられたアルバムは『Babylon』と名づけられ、この5月にリリースされたばかりだ。
その『Babylon』はアルカライン・トリオの延長上で、マットの80年代ニュー・ウェイヴ趣味・・・いや、80年代ニュー・ウェイヴ愛を、存分に表現した作品と言ってもいいかもしれない。マットもジョイ・ディヴィジョン、ザ・キュアー、デペッシュ・モード、ザ・スミス、ザ・カメレオンズUKといった80年代のイギリスのニュー・ウェイヴ・バンドからの影響を認めている。かなり聴きこんでいなければ、カメレオンズなんて名前は出てこないのでは。
ソングライティングを重視していると言うだけあって、アルカライン・トリオのファンも納得の「Voices」からアコースティック・タッチの「Angel Of Deaf」まで、緩急を自在に使い分けた曲は粒揃い。中にはダンサブルなビートを忍ばせた「You」、シンセ・サウンドを大胆に使った「Falling Like Rain」、ネオ・サイケなギター・サウンドを聴かせる「How The Hell Did We Get Here?」のような曲も収録され、聴きごたえは満点。
パンクの一言には収まりきらない唯一無二の美学を持ったマットの才能を、改めて印象づける傑作だ。
6月からはシアトルのガレージ・パンク・バンド、マーダー・シティ・デヴィルズのレスリー・ハーディを加えたラインナップでUSツアーも行う。日本に来てほしいと思うのは、決して僕だけではないはずだ。
最後に余談。
アルカライン・トリオが来日したとき、彼らが宿泊していたホテルでマットとドラムのデレク・グラントにインタビューさせてもらった。何を聞いたかちょっと忘れてしまったけれど、インタビューの間ずっと湯呑み茶碗で日本茶を飲んでいたマットの姿だけはいまだにはっきりと覚えている。
Babylon / Matt Skiba And The Sekrets (Superball Music 0583-2)